物流業界でも進むSDGsの取り組みとは?SDGsの基本と課題、事例を解説

SDGs

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SDGsとは「持続可能な開発目標」のことで、国際社会全体で取り組むべき目標です。未来の地球を守るための環境保全対策や、世界中の誰もが心地良く暮らせる社会を実現するための、17の目標が定められています。

 

物流業界においても、SDGsを意識した経営が必要です。社会を構成する企業として取り組むべきSDGsの概要を解説するとともに、物流業界と関連性の高い目標や、具体的な施策についてご紹介します。

 

SDGsとは?

SDGS17の目標

 

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った略称で「エス・ディー・ジーズ」と読みます。2015年9月の国連サミットで、2015年から2030年までに達成すべき目標として「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択されました。これが、SDGsです。

 

日本語では「持続可能な開発目標」と訳されるSDGsは、環境問題や飢餓、世界の平和といった達成すべき17の目標と、目標達成に必要な169のターゲットで構成されています。

 

「誰一人取り残さない」がスローガンのSDGsの目標は、すべての国、すべての人々に対して達成されるべきものです。日本の企業でも、SDGsを達成するための取り組みが多数行われています。

 

物流業界がSDGsに取り組む理由

SDGsは、業界を問わずすべての人々が一丸となって取り組むべき目標です。それは、物流業界も例外ではありません。

 

日本の大手企業を中心に構成されている日本経済団体連合会(経団連)は、革新技術の活用によってSDGs達成を目指す「Society 5.0 for SDGs」を提唱しています。

Society 5.0 for SDGsでは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会をそれぞれSociety1.0から4.0に位置付け、そのさらに先にある、全体が最適化された豊かな社会をSociety 5.0と定義。人類が協力し合って社会的課題を解決するSociety 5.0の社会は、SDGsの達成とも軸をひとつにするものです。SDGsの達成とSociety 5.0の実現のために、物流業界でも経営の在り方を見直すことが求められています。

 

国内のCO2排出量の17.4%が運輸部門から、さらにその23.0%が営業用貨物車(トラック)から排出されています。CO2排出量を削減していくためには、物流業界全体で輸送の効率化を図っていく必要があるでしょう。また、人手不足や労働環境の改善といった物流業界が抱える課題も、SDGsの目標と共通しています。

物流業界の抱える課題を改善していくことが、SDGsの達成にもつながっていくといえます。

 

出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」(2023年5月)

 

 

SDGsとESGの違い

ESG

 

SDGsとESGは似た文脈で使われる言葉ですが、意味が異なります。ESGは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取った言葉です。これらは投資先を選定する際の指標で、「環境問題や社会問題への取り組み、コーポレート・ガバナンスについて投資の検討材料にすべきである」としています。投資を受ける企業側も、投資家からの評価を得るために、環境、社会、企業統治に関する配慮を行うことが必要です。

 

「環境問題や社会問題などに関する取り組み」という点はSDGsと共通していますが、SDGsが国連や政府が主体になっているのに対し、ESGは企業や機関投資家が主体となっている点に違いがあります。

 

 

物流業界と関連性のあるSDGsの目標

SDGsには17の目標が設定されていますが、そのうち、物流業界と関係性の深いものをご紹介しましょう。

ここでご紹介する目標はあくまでも一例です。実際には、物流業界の各企業において自社でできる取り組みが検討されているため、それぞれの目標につながる施策をとっている企業も多くあります。17の目標を踏まえて、自社で何ができるのかを検討し、実行していくことが大切です。

 

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

7エネルギーをみんなにそしてクリーンに

 

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とは、電気やガス、石油といったエネルギーを大切に使うことや、クリーンなエネルギーを推進すること、すべての人がエネルギーを利用可能にすることなどを目指す目標です。

 

物流業界では、荷物の運搬などに多くのエネルギーを使用します。クリーンなエネルギーへの転換や、トラックなどから出る排ガスを削減するための輸送の効率化などが、目標7の達成につながっていくと考えられます。

 

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」

8働きがいも経済成長も

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」とは、持続可能な経済成長を実現するために、すべての人が「働きがいのある人間らしい仕事」に就けるようにするという目標です。

 

物流業界を含め、すべての企業は、生産性の向上による働きやすい職場の実現や、安定的な雇用の創出などを通して、従業員に働きがいのある仕事を提供していく必要があります。

 

職場環境や長時間労働などが問題になりがちな物流業界においても、働きやすい環境、いわゆる「ホワイト物流」へ転換するべく、さまざまな取り組みが行われています。ドライバー不足を解消するためにも、働きやすさの改善は急務です。

 

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

9産業と技術革新の基盤をつくろう

 

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは、道路、情報通信技術、水道などのインフラ設備を整え、技術革新やイノベーションを目指す目標です。

国土交通省は、物流を「我が国の産業競争力の強化、豊かな国民生活の実現や地方創生を支える重要な社会インフラ」としています。物流が、経済活動やすこやかな市民生活を支える重要な社会基盤の役割を果たせるよう、持続可能な技術革新を行っていくための取り組みが求められるといえるでしょう。

 

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」

12つくる責任つかう責任

 

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは、食品ロス、水不足、エネルギー消費などへの対策を促すための目標です。「つくる」「つかう」を繰り返す消費型の社会から脱却し、より少ない原料で、より多く、より良いものを作り、持続可能な消費を目指していく必要があります。

物流業界においては、大型倉庫において太陽光発電パネルの設置や、LED照明の導入などが行われています。また、梱包資材の削減や在庫システムの拡充による廃棄ロスなどでも、消費問題への対応が可能です。

 

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」

13気候変動に具体的な対策を

SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」とは、世界各地の気候変動とそれによる影響を軽減するための目標を指します。

物流業界においては、トラックから排出されるCO2の削減や水素自動車の導入、船舶や鉄道を活用するモーダルシフトの実践などによって対策が可能です。

 

 

物流業界のSDGsの取り組みを支援する体制

さまざまな課題を抱える物流業界に対し、国による法整備、団体業界による体制づくりが行われています。SDGsを切り口とした課題解決のための対策には、下記のようなものがあります。

 

物流総合効率化法の整備

物流に関するサステナビリティを推進する法律として、物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)があります。物流業界への支援措置などを定めた法律で、施行以来、幾度か改正が行われ、物流業界へのサポートの拡充が行われています。直近では、2023年度にも支援対象事業が追加されました。

 

物流業者同士が連携して業務効率化および省力化に取り組むことで、事業許可の一括取得や設備投資への補助、規制の緩和措置適用といったメリットを得られます。こうした国からの支援策を活用し、物流業界全体の労働環境を改善し、さまざまな業務効率化に取り組む企業を増やすことが狙いです。

 

「ホワイト物流」推進運動

ホワイト物流」推進運動とは、トラック輸送の生産性向上と、女性や高齢者も働きやすい労働環境の実現を目的とした運動です。

国土交通省、経済産業省、農林水産省が連携して後押ししていて、労働環境の改善によるトラックドライバーの雇用拡大を目指しています。

 

 

物流業界におけるSDGsの取り組み例

物流業界では、SDGsに関するさまざまな取り組みが行われています。実際の取り組み例を6つご紹介します。

 

梱包資材の削減

物流業界では、数多くの梱包資材が発生します。これらの資材を削減したり、再利用が可能なものに切り替えたりすることで、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」などに貢献することが可能です。

具体的には、プラスチックの梱包材をやめてリサイクル率が高い段ボールに切り替える、オリコン(折り畳みコンテナ)や拠点間を行き来する通い箱などを活用するといった対策が該当します。

オリコン(折りたたみコンテナ)を検品する様子

 

グリーン物流パートナーシップ

グリーン物流パートナーシップとは、CO2排出削減を目的に、荷主企業と物流企業の連携を促進する制度のこと。物流において消費する燃料の削減や効率的な配送方法の実現によって、環境負荷の低減を目指しています。

設備の省エネ化やグリーン物流につながる配送方法など、さまざまな取り組みに関する情報発信のほか、企業や個人の会員登録、物流パートナーシップ優良事業者表彰などを行い、物流業界のSDGsへの意識の底上げを図っています。

 

モーダルシフト

モーダルシフトとは、これまでトラックなどの自動車で行っていた荷物の輸送を鉄道や船舶に切り替えることです。拠点間の距離が長い場合、すべてをトラックで運ぶのではなく、一部の道程を鉄道や船舶に切り替えることで環境負荷を低減することができます。貨物輸送による環境負荷を、極力小さくする取り組みです。

モーダルシフト

 

共同配送

共同配送の仕組み

 

共同配送は、複数の事業者が共同で荷物を運ぶことを指します。例えば「複数のメーカーの商品を物流センターにまとめて一括で百貨店に出荷する」といった例が共同配送です。

複数の企業がそれぞれトラックを手配するのではなく、行き先が同じ荷物を運ぶ荷主がトラックを1台にまとめることで、効率が良く環境に優しい輸送が可能になります。

 

共同配送についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

共同配送とは?メリット・デメリットや課題、導入に適した商材を紹介

 

 

物流関連企業がSDGsに取り組むためのポイント

物流関連企業がSDGsに取り組む際、留意しておくべきポイントをまとめました。企業の役員や一部の部署だけがSDGsを意識するのではなく、企業全体で共通の意識を持って取り組むことが重要です。

 

物流業務を可視化する

物流業務を可視化することで、どこに課題があるのかが見えやすくなります。全体の流れを改善するための施策もとりやすくなるでしょう。物流をシステム化してデータを蓄積、分析すれば、客観的に業務の流れを確認することもできます。

 

業務を標準化する

物流業務の標準化によって、偏りのない対策をとることが可能です。効果を得られる業務改善策が見つかったら、すべての物流センターに横展開することで企業全体の環境改善につながります。

ただし、個人の知見やスキルに頼った対策は、別の場所での再現ができない可能性も。どの物流センターでも再現できる対策の検討やマニュアルの整備などを行うことが求められます。

 

社内外のコミュニケーションを深める

社内外のコミュニケーションも、SDGsの実現に役立ちます。社内のコミュニケーションが活発になれば、SDGsに関する取り組みの情報の社内共有が可能に。さらに、情報がスムーズに行き渡る環境を作ることで、働きやすさの改善も見込めます。

また、社外の関係企業とのコミュニケーションを深めることで、他社と一丸となってSDGsに取り組みやすくなります。荷主企業と物流企業が、同じ目標に向けて協力していくことが大切です。

 

定期的に効果を測定し、評価を報告する

SDGsを実現するための取り組みは、目標と期間の設定から始めます。例えば、現状のエネルギー消費量とCO2排出量を測定し、一定期間中にどれだけ削減するのか目標を設定。期間と目標を具体的にすることで、何を目指せば良いのかが明確になります。定期的に効果測定と施策の評価をすることで、次の目標も設定しやすくなるでしょう。

 

また、施策評価の公表によって、投資家などのステークホルダーにも取り組み内容を伝えられます。企業としての責任をどのように果たしているのかをわかりやすく伝えることが可能です。

 

 

物流業界では環境経営の実現につながるSDGsに期待がかかっている

SDGsは、物流業界でも多くの企業が取り組んでいる重要な課題です。各企業が環境経営を実現することは、ステークホルダーだけでなく同じ社会に生きるすべての人々にとって大切なことだといえるでしょう。

 

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