物流業界の課題とは?すぐに導入できる解決策と業界の流れを解説

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近年、ECサイトが急激に発展し、需要拡大によって個人向けの配送が増加。物流業界に大きな変化が訪れています。すべての産業やビジネスに直結する経済活動のインフラである物流業界は、市場規模の拡大が見込まれているといえるでしょう。

 

一方で、取り沙汰される2024年問題をはじめ、人材不足やDXの遅れなど、物流業界が抱える課題は山積みの状態です。この記事では、物流業界が抱える課題のほか、解決策や今後の動向について解説します。

 

 

物流業界が抱える課題

2023年度に国土交通省が発表したデータによると、国内の貨物輸送量はほぼ横ばいです。その中で、通販・EC市場は拡大していることが日本通信販売協会の調べでわかっています。特に、コロナ禍を経てライフスタイルが変化し、BtoCの宅配便の取扱量は増加し、物流業界に大きな影響を与えています。

参考:国土交通省総合政策局「貨物輸送の現況について(参考データ)」(2023年7月)

参考:日本通信販売協会「2022年度通販市場売上高調査」(2023年8月)

 

株式会社矢野経済研究所のマーケット調査によると、物流の17業種において20兆円を超えて市場が推移していますが、今後その市場規模は24兆円を超えることが予測されています。物流業界は、さらに市場拡大するといえるでしょう。

一方、物流業界は、物流コストの上昇や少子高齢化による人材不足、さらにシステム化やDXの遅れなど、さまざまな課題を抱えています。早急に対応が必要とされている課題は、下記のとおりです。

参考:株式会社矢野経済研究所「物流17業種市場に関する調査」(2023年)

 

トラックドライバーなどの人手不足

物流需要の高まりに対し、配送を担当するトラックドライバーは減少しています。ドライバーの人手不足はさまざまな要因が重なっています。それぞれの要因を詳しく見ていきましょう。

 

  • 労働環境の悪化

トラックドライバーの労働環境の悪化は、人手不足に直結します。BtoBの輸配送では、長時間の運転や納品先での荷下ろし待ちの待機時間など、拘束時間が長いことが大きな問題となっています。

BtoCの輸配送でも納品先の不在による再配達や夜間の時間指定などが、トラックドライバーの負荷に直結。また、送料無料が一般化したことで、1人あたりの取扱貨物量が増加したことも懸念されています。

 

  • トラックドライバーの高齢化

トラックドライバーの高齢化も、人手不足の要因のひとつです。国土交通省の「トラック運送業の現況について」によると、2016年当時のドライバーの平均年齢は45.4歳となっています。

時が経過し、2024年現在では平均年齢の高齢化が進んでいることが推測されます。一方、トラックドライバーの過酷な労働環境やきつい仕事内容が若年層のあいだで避けられ、トラックドライバーのなり手が減少。物流業界に人が集まらないため、今後ますますドライバーの高齢化が進むといえます。

出典:国土交通省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

 

  • 女性進出の遅れ

総務省の調査によると、トラック運送業界の女性トラックドライバー比率は非常に少ないのが現状です。全産業における女性比率は44.5%であるのに対し、トラック運送業界では2.3%にすぎません。

これは、労働時間が長いにもかかわらず低賃金で厳しい労働環境であるほか、女性が快適に働くための環境整備が遅れていることが原因といえるでしょう。

参考:総務省「令和3年 労働力調査年報

 

  • 宅配需要の増加

宅配需要の増加も、トラックドライバー不足に輪をかけています。トラックドライバーが減少傾向にある中、荷物の取扱量が増加すれば、輸送の需要と供給のバランスを維持できなくなることも当然です。個人宅に配送する宅配便では再配達や夜間届けなどが発生し、非効率で負荷の高い仕事になります。

 

  • 運転免許制度の改正による人材流入の妨げ

2017年に改正された運転免許制度では、新しく普通自動車免許を取得した若年層は、基本的に2tトラックを運転することができません。2017年3月12日までの免許制度では、普通自動車免許で運転できる最大積載量が3t未満でしたが、2017年3月12日以降の改正後の免許制度では、普通自動車免許で運転できる最大積載量が2t未満になったためです。

同年に誕生した「準中型自動車免許」で2tトラックを運転することが可能ですが、取得するためには普通自動車免許取得から2年以上経過している必要があり、若年層にとってはトラックドライバーになるためのハードルが高くなったといえます。

 

物流・運送業界をとりまく2024年問題

物流・運送業界の「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることで生じるさまざまな問題のことです。この法律によって、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることになりました。労働時間が短くなることで物流に影響が出ることが懸念されています。

特に長距離輸送においては、時間規制によってどうしても走行距離が短くなるため、遠隔地への輸送が困難になることが予想されており、大きな課題です。

 

小口配送の急激な拡大

EC市場の拡大よってBtoCの小口配送が増加しました。小口配送は商品単価が安く、運賃を値上げすることが困難です。

一方で、小口配送は配送頻度が高く、負荷がかかるため人件費を抑えることはできません。物流事業者に、こうしたしわ寄せが直撃しています。

 

ECに関わる物流の課題への取り組みとして、消費者庁はネット通販を行う事業者団体に対し、ECなどにおける「送料無料」表示を取りやめるよう、表示の見直しを求めています。

送料についての表示について、「送料当社負担」や価格に「送料込み」という表記に変更し、送料を誰が負担しているのかを明示することを推奨。こうした取り組みをきっかけに、消費者の物流に対する意識や行動が変化することも、物流改革には必要なことでしょう。

参考:消費者庁「物流の『2024年問題』と『送料無料』表示について

 

紛争による燃料費の高騰

トラックや船舶などでの輸送において、原油価格は重要な課題です。原油価格は、世界情勢により変動しますが、紛争によって原油価格が高騰し、軽油の価格も上昇。物流事業者に対するコストアップをしいています。

こうした状況下、運送料金を値上げしなければ、物流事業者は採算が取れません。しかし、荷主に対する値上げ交渉が困難なため、物流事業社の収益を圧迫。特に運送業者には中小企業が多く、取引上の立場が弱いため、倒産に至るケースも少なくありません。

 

 

物流の課題を解決するための物流総合効率化法による取り組み

さまざまな課題を抱える物流業界ですが、国交省が主導し、課題解決の取り組みを行っています。「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)」を活用し、「モーダルシフト」「共同配送」「輸送網の集約」の3つの事業に対し、事業の立ち上げや実施の促進、金融支援などを行っています。

支援が広がる3つの事業への取り組みがどのようなものか、具体的に見ていきましょう。

 

モーダルシフト

モーダルシフトとは、トラックによる輸送を鉄道や船舶に変更することです。トラックを使用する長距離配送を、鉄道・船舶を活用する大量輸送へ移行することに対し、支援措置があります。

国が主導し、トラック中心の輸送手段から大量輸送に変化していくことで、物流全体の流れが変わる可能性があるでしょう。

モーダルシフト

 

共同配送

共同配送とは、異なる荷主の貨物や商品を同じトラックで輸送することです。輸配送の共同化によって、低積載率による個別納品を、高積載率の一括納品に改善することを目指します。物流総合効率化法では、こうした事業に対する支援措置があります。

共同配送

 

共同配送についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

共同配送とは?メリット・デメリットや課題、導入に適した商材を紹介

 

輸送網の集約

輸送網の集約とは、多数の物流拠点が分散し複雑化した輸送ネットワークをまとめて、効率化することを指します。

例えば、従来型の倉庫や流通加工場、荷捌き用建屋などは非効率的で、役割も分散していました。しかし、こうした拠点を最新の輸送連携型倉庫に集約することで、効率化・集約化された輸送網にすることが可能です。物流総合効率化法では、こうした事業に対する支援を行っています。

 

 

物流業界の課題を解決するための解決策とは?

物流は私たちの生活を支える重要な社会インフラです。物流業界の課題を解決するためには、物流事業者はもちろん、荷主企業、さらに消費者も一体となって、物流に対する意識改革や行動変容をすることが求められています。国土交通省も、「荷主企業や消費者も一緒になって、それぞれの立場で担うべき役割を再考し、物流が直面している諸課題の解決に向けた取組を進め、持続可能な物流の実現につなげることが必要不可欠」と提唱しています。

参考:国土交通省「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ

 

物流事業者が物流の課題解決のためにすぐに導入できる対策は、IoTなどのテクノロジーを導入し、DXを進めることです。物流業界で導入が進んでいるデジタル技術は、主に下記のようなものがあります。

 

WMSなどの物流システムの導入

物流領域には、業務を効率化するためのさまざまなデジタルツールがあります。ここでは、業務の効率化を目指すことができる複数のシステムについてご説明します。

 

  • WMS

WMSとはWarehouse Management Systemの略称で、「倉庫管理システム」のことです。WMSでは商品の入荷から保管、出荷までを一括してデジタルで効率的に管理することができます。

WMSの主な機能は、「入荷管理」「出荷管理」「在庫管理」「棚卸管理」の4つ。WMSの導入によって倉庫内作業の一括管理を行うことができ、倉庫の状況を可視化できます。

 

WMSについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

WMS(倉庫管理システム)とは?物流現場への導入メリットを解説

 

  • TMS(輸配送管理システム)

TMSとは、Transport Management Systemの略称で、「輸配送管理システム」のことです。TMSは主にトラックの配車計画や、運行管理を支援するシステムを中心に構成され、無駄のない効率的な運送を実現します。TMSは配車に関わる作業を標準化し、輸配送に関わる実績データをデジタルで可視化することも可能です。

 

ロボットや自動倉庫による自動化

ロボットや自動倉庫といった「マテハン(マテリアルハンドリング)」の活用は、業務効率の向上に貢献します。特に物流センターや倉庫などでは、スタッフの移動や作業動線を短くし、1件あたりの作業にかかる所要時間を短縮することが重要です。

ロボットや自動倉庫による入出庫や保管などの工程を自動化できれば、人手不足の課題解決につながるでしょう。

 

AI活用による業務の効率化

物流業界はこれまで、人手による属人的なアナログ作業が主流でした。しかし、近年ではシステムや自動化機器の導入が加速し、AIによる業務の効率化の動きも出てきています。

特に、物流の上流である需要予測にAIを活用し、予測精度を高めることは、無駄な調達や在庫を減らし、輸送や保管の効率を高めることにもつながるでしょう。また、輸配送では、AIによる最適なルート選択によって輸配送の効率を向上させることも期待できます。

 

 

物流の課題に取り組むなら物流のプロによる包括的なサポートをご活用ください

物流はさまざまな課題があるものの、大きな市場拡大も見込まれています。国が主導する取り組みや、AIをはじめとするシステム化により、大きな変化の時を迎えています。さまざまな課題解決を活用し、各事業者で物流を効率化することが重要といえるでしょう。

 

物流の課題解決には、豊かな知見や実績があるプロフェッショナルによる包括的なサポートが最適です。物流システムの導入や、最新技術についてご興味をお持ちであれば、物流のプロ集団・プラス ロジスティクスにぜひご相談ください。それぞれのお悩みに対し、最適な戦略をご提案します。

 

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