館内物流とは?導入のメリットと効率化のポイントを詳しく解説

この記事は、 8 分で読めます。

経済活動を活性化させる方法のひとつは、物流の効率化です。大型商業施設やオフィスビルでは館内物流を取り入れると、施設全体の効率化と生産性の向上、コスト削減につなげられるでしょう。

この記事では、館内物流の定義や導入の流れ、必要な設備と運用のポイント、さらに導入によるメリットまで、わかりやすく解説します。

 

 

館内物流とは施設内でテナント向けの荷物を一括して集荷・配送すること

館内物流とは、施設内における荷物の受け取り・仕分け・配送・保管といった物流プロセスを一括して管理・運用する仕組みのことです。一般的には大型商業施設、オフィスビル、工場などの大規模な建物内で採用されており、テナントごとに個別で対応していた配送業務を、施設全体で一元化し、効率化を図ります。

 

大型商業施設やオフィスビルで、テナントが個別に物流を行っていると、次のような物流課題が生じがちです。

<大型商業施設やオフィスビルで起こりがちな物流課題>
  • 配送トラックによる周辺道路の渋滞、混雑
  • 搬入・搬出スペースの不足
  • エレベーターや通路の混雑
  • 時間帯による配送制限
  • 荷物の受け渡しミスや紛失
  • 廃棄物処理の負担増加
  • 複数業者間での調整の負担
  • 一時保管スペースの確保が困難
  • 繁忙期・イベント時の対応

館内物流を導入すれば、納品車両の一括管理やスムーズな荷受けが可能になり、館内の混雑を抑制でき、煩雑だった物流プロセスがスマート化することで課題を解消できます。

国土交通省も館内物流を推奨しており、都市部での交通渋滞や人手不足といった社会課題を解決する手段として注目されています。施設設計の段階から館内物流を意識すれば、建物全体の機能性と利便性が大きく向上するでしょう。

※参考 「物流を考慮した建築物の設計・運用について

 

 

館内物流を導入するメリット

館内物流の導入は、単に荷物の運搬を効率化するだけでなく、施設全体の運営やイメージ向上にもつながる多くのメリットをもたらします。館内物流を導入する主なメリットは、次のとおりです。

 

納品時間の安定化

館内物流により、荷受け・仕分け・配送までを一元管理することで、納品時間が一定に保たれます。テナント側もスケジュールが立てやすくなり、商品陳列や販売準備がスムーズになります。

 

駐車場や周辺環境への負担軽減

配送車両がトラックヤードに集約すると、施設周辺の道路渋滞や長時間の路上駐車といった課題が軽減されます。駐車場の回転率も向上し、ほかの利用者への影響も少なくなります。

 

荷物の接触・破損事故の削減

搬入・搬出を荷物の扱いに慣れた物流専門スタッフが担当すれば、荷物の取り扱いが丁寧になり、接触事故や破損のリスクが大幅に減少します。これはテナントにとっても大きな安心材料といえるでしょう。

 

セキュリティの向上

専任の館内物流スタッフが出入りを管理すれば、不特定多数の配送ドライバーが施設内に立ち入ることはありません。これにより、不審者の侵入リスクが下がり、全体のセキュリティレベルが向上します。

 

労働力とコストの最適化

自動化システムやITを取り入れれば、必要な人員を最小限に抑えつつ、業務を効率化できます。人手不足への対応や物流コストの削減にもつながり、各テナントのスタッフの負担も軽減されます。

 

施設イメージと競争力の向上

館内物流の整備により、施設全体の運営品質が高まり、他施設との差別化が図れます。スムーズな物流はテナント誘致の強みとなり、顧客満足度やリピート率の向上にも貢献します。

 

 

館内物流の流れ

館内物流が実際にどのように機能しているのかをイメージしやすくするために、大型ショッピングモールを例に具体的な流れをご紹介します。

 

■館内物流の流れ

 

1. 荷物を一括で受け取り

複数の納品業者が搬入する荷物を、施設内のトラックヤードなどで一括受け取りします。これにより、テナントごとに個別対応する必要がなくなり、納品時間や場所のバラつきを抑えられ、効率的な運用が可能です。

 

2. 仕分け場でテナント別に仕分け

受け取った荷物は、施設内の仕分けスペースに運ばれ、テナント別やカテゴリ別に仕分けされます。冷蔵・冷凍などの温度管理が必要な荷物や、着時間指定がある場合にも柔軟に対応できます。

 

3. テナント向けに荷物を配達

仕分けされた荷物は、スタッフによって各テナントへ届けられます。多くの場合、各店舗のバックヤードや指定された荷受け場所まで台車などで搬送され、スムーズに納品されます。

 

4. 各店舗からの発送品にも対応

各テナントから発送される荷物についても、館内物流で対応します。集荷された荷物は一括で配送業者に引き渡され、店舗スタッフの負担軽減や発送業務の効率化につながります。

 

 

館内物流を整備するためには

館内物流を導入・運用するためには、物流導線やスペース、人員配置など、多角的な整備が求められます。効率的かつ安全な館内物流を実現するために必要な要素を、下記で詳しく紹介します。

 

荷下ろし・荷さばきのスペースを確保する

トラックがスムーズに荷下ろしできるスペースの確保は重要です。道路や周辺地域にトラックが滞留してしまうと、渋滞や近隣住民とのトラブルの原因になります。加えて、荷物を一時的に置くための「荷さばきスペース」も必要です。このスペースが十分にあれば、仕分けや再搬送が円滑に行えます。

 

十分な保管スペースをつくる

荷受け後、テナントへ配送するまでの間に荷物を一時保管するスペースも必要です。特に大型施設では、時間指定納品や営業時間外配送などにも対応するため、保管スペースの設計が館内物流の成否を左右します。

 

搬送設備、動線を確保する

台車やカートでのスムーズな移動を可能にするためには、搬送動線の設計も不可欠です。施設内に十分な幅の通路や、荷物専用エレベーターを配置すれば、スタッフの移動時間を削減し、業務効率が大幅に向上します。

 

館内物流管理システムを導入する

人・モノ・車両の出入りを一元管理する「館内物流管理システム」の導入により、運用の精度と安全性が向上します。情報が可視化されることで、業務の無駄を削減し、セキュリティ面の強化にもつながります。

 

人員配置を徹底する

館内物流の要となるのが「人」です。館内構造を熟知したスタッフを育成し、荷物量に応じて柔軟に人員を配置することで、ミスやトラブルの防止が可能になります。繁忙期やイベント時なども見越した計画的な人材配置が求められます。

 

 

館内物流の効率化ポイント

館内物流をより効果的に機能させるには、単なる運用だけでなく、設計段階からの工夫やITの導入が欠かせません。効率化のために押さえておきたいポイントを、以下で解説します。

 

人・物・車両・情報を一元管理

館内物流では、「人・物・車両・情報」のすべてを一元的に把握・管理することが重要です。誰がいつ何をどこに運んだのか、どのルートでどの車両が出入りしたのかといった情報をリアルタイムで管理すれば、無駄やミスを削減し、運用の透明性を高めることができます。

 

館内物流に適したレイアウト設計

施設自体の設計が館内物流に対応しているかどうかが、効率化のカギを握ります。荷受け場所から仕分けスペース、搬送ルート、エレベーターの配置まで、物流の動線を意識したレイアウト設計が不可欠です。後からの対応ではコストもかかるため、施設の新設・改修時に物流視点を取り入れることが望ましいでしょう。

 

自動化技術の導入

近年では、館内物流においてもAGV(無人搬送車)や自動仕分け機器の導入が進んでいます。さらに、館内物流管理システムを組み合わせることで、人的ミスの削減、作業スピードの向上、コストの最適化が実現します。ITと機械の活用により、持続可能で柔軟な物流体制を構築できます。

 

 

館内配送を検討中の施設担当者さまは、プラス ロジスティクスグループにご相談ください

館内物流は、ただの「荷物の搬入・搬出」ではなく、施設全体の運営効率や安全性、テナント満足度にも大きく関わる重要な要素です。納品の効率化、周辺環境への配慮、セキュリティ強化、さらには労働力不足への対応など、現代の物流課題に対応するためにも、館内物流の整備と最適化は避けて通れません。

 

プラス ロジスティクスグループで配送サービスを専門に行うプラス カーゴサービスでは、こうした館内物流のニーズに対応し、商業施設・オフィスビル・工場など多様な現場での実績を活かして、最適なソリューションをご提案しています。施設内配送を導入したいけれど何から手をつけるべきかわからない、既存施設でなにかできることはないかとお困りの大型施設の管理担当者さまは、ぜひ一度ご相談ください。

RELATED