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物流コストとは、物流にかかるコスト全般を指す言葉です。物流コストの削減は、メーカーや小売業を営む事業者にとって重要なミッションだといえるでしょう。しかし、近年の労働力不足や燃料、資材の高騰などが、物流コストの増大につながっています。
この記事では、物流コストの具体的な内容や売上に占める割合、物流コストを削減する方法について、成功事例とともに解説します。
物流を改善するためには物流コストの削減が課題
近年の労働力不足や燃料、資材の高騰などを背景に、物流の改善が求められています。物流の各工程で効率化が進められていますが、どの工程においても物流コストの削減が大きな課題です。物流コストとは、商品や製品を製造してから消費者に届けるまでの流れの中で生じる、物流にかかわるすべてのコストを指す言葉です。
物流にかかるコストは、輸送費だけではありません。保管コストや人件費など、多くのコストが発生します。コスト削減を行うためには、具体的にどのような部分にお金がかかっているのかを知らなければいけません。
物流コストの内訳
物流にかかわるすべてのコストである物流コストは、具体的にはどのような費用なのでしょうか。物流コストの具体的な内訳は、次のとおりです。
輸送費・運送費
輸送費・運送費とは、配送業者を利用して荷物を配送する場合の配送料や、自社トラックを利用する場合のガソリン代、減価償却費などです。
物流コストの物流機能別構成比を見てみると、輸送費は全体の55.1%を占めており、非常に高い割合となっています。なお、製造業は60.5%、小売業は42.2%と業種による差異はあるものの、最も比率が低い卸売業でも41.7%で、そのほかの項目に比べ高い比率となっています。
■物流コストの機能別構成比
出典:公益社団法人日本ロジスティクス システム協会「2022年度 物流コスト調査報告書【概要版】」
輸送コストは比率が高い分、削減に成功できれば高い効果を発揮するかもしれません。一方で、物流において配送は省くことができないので、コスト削減のためには従来のやり方にとらわれない抜本的な改革が必要でしょう。
荷役費
荷役費とは、商品の入出庫やピッキング、仕分け、流通加工、梱包といった作業に必要なコストです。これらの業務にかかるコストの内訳は、多くが人件費です。人件費を削減するには、業務フローの見直しのほか、無駄の削減、業務の標準化、効率化につながるシステムや物流ロボットの導入といった対策を行うといいでしょう。
一方で、人件費の削減のために人を減らす方法はおすすめできません。作業品質の低下を招くコスト削減は、将来的な返品交換やクレーム対応といった別のコストにつながるおそれがあり、顧客満足度の低下や、従業員の不満の原因になります。
保管費
保管費とは、商品を保管するために必要なコストです。倉庫の賃料や光熱費、管理コストなど、倉庫を維持するために必要なコスト全般が該当します。
前述した物流機能別構成比によると、保管費は全体の16.9%と、輸送費の次に比率の大きいコストです。
物流管理費・人件費
物流管理費とは、在庫管理システムや配送管理システム、受発注システムなどの導入や運用にかかる費用や、物流に携わる担当者の人件費なども物流コストに含まれます。
システムの導入には多大な初期コストがかかることも珍しくありません。しかし、導入によってここまでに紹介してきた物流コストの一部を削減できる可能性があります。物流コストの削減を検討する際は、それぞれ単独で考えるのではなく、総合的に判断する必要があるでしょう。
物流コスト比率とは
物流コスト比率とは、売上に占める物流コストの割合のことです。
2022年度の全業種の物流コスト比率は5.31%でした。2021年は5.7%だったため、近年の傾向よりは減少気味ですが、2007年から2019年までは5.0%を切っていたため、一概に減少しているとはいえません。
出典:公益社団法人日本ロジスティクス システム協会「2022年度 物流コスト調査報告書【概要版】」
一方で、物流量あたりの物流コストは上昇傾向にあり、物流単価が上がっていることを示しています。しかし、それ以上に売上高が上がったことで、物流コスト比率は減少しました。
近年、物流業界の労働力不足は深刻化しており、トラックの運賃や荷役費も値上がりが続いていくと考えられます。今後、輸送費などの値上げが進んでいった場合は、物流コスト比率も上昇していく可能性が高いでしょう。
将来的にも物流コスト比率を上げず、適切な割合を維持していくためには、物流コスト削減のための対策を積極的に取っていく必要があります。かといって、輸送費の値上げを一律に認めないといった方法は、ドライバーのさらなる減少を招きかねません。無理のないコスト削減の手法を模索することが必要です。
物流コストを削減する方法
物流コストを削減する方法はひとつではありません。さまざまな方法の中から、自社に適したやり方を検討しましょう。複数の方法を実践することも可能です。取り組みやすい方法や、自社の課題解決につながりやすい方法、コスト削減効果の高い方法などから実践してみてください。
具体的な物流コストを削減する方法は、下記のとおりです。
拠点を最適化する
物流拠点の数や立地を見直せば、物流コストを大幅に削減できる可能性があります。
例えば、現状3ヵ所ある拠点を1ヵ所に集約できれば、その分、拠点の賃料や管理費、光熱費の削減が可能です。同時に、在庫管理にかかる手間を削減できるため、人件費なども削減できるかもしれません。
一方で、物流拠点を分散させ、顧客に近い場所に複数の拠点を設けることで、配送効率を上げるといった工夫もできます。
物流拠点の集約と分散は、一概にどちらが良いといえるものではありません。コストだけを考えるのであれば、多くの場合は集約型にメリットがあります。しかし、遠方の顧客への配送が発生する場合、配送コストがかかります。また、災害時のリスク分散ができないことも懸念点です。物流戦略にもとづいて、顧客のニーズや自社の状況に適した物流拠点を選択しましょう。
物流拠点についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
倉庫内業務を効率化する
倉庫内におけるピッキングや梱包、棚卸といった作業は、人の手でアナログに行われていることが珍しくありません。自動化を取り入れ、省力化していくことが品質向上やコスト削減につながります。
同じアナログ作業でも、業務フローの見直しや導線、レイアウトの見直し、マニュアルの整備などによってある程度効率化することも可能です。システムを導入して大幅な効率化を図ることもできます。
システムを導入する
WMS(倉庫管理システム)やDPS(デジタルピッキングシステム)、配送管理システムといったシステムを導入することで、物流業務の効率化や省人化、作業精度の向上につながります。これらのシステムを必要に応じて連携させれば、スムーズな物流を実現できます。
倉庫内業務を自動化できるマテハンの導入も効果的です。マテハンにはさまざまな種類があり、導入コストや難度が異なります。現状の課題の解消につながるマテハンを選定し、導入を検討してください。
物流専門企業に物流のすべてをアウトソーシングする
プラス ロジスティクスをはじめとする物流専門企業への物流アウトソーシングなら、物流コストの削減が一気に解決します。
倉庫の運用から配送ネットワークの構築まで、物流工程全体の最適化が可能な企業に依頼することで、商品特性や個別の事情に応じた物流工程の再構築が可能です。抜本的なコストの削減に取り組みたい場合や、コスト削減に取り組みたくても、どこから始めれば良いかわからないという場合は、プロならではのノウハウを持った物流専門企業にご相談ください。物流専門企業なら、業務効率化や品質向上といった、多くの課題を解決しながら、コスト削減に貢献できます。
なお、アウトソーシングにはコストが発生しますが、その分、物流品質が向上し、社内の人的リソースをコア業務にあてられるというメリットもあります。物流コスト比率を適切に保つために、ぜひご活用ください。
プラス ロジスティクスが実現したコスト削減の成功事例
物流専門企業プラス ロジスティクスでは、多くの荷主企業様の物流コスト削減を手掛けています。
物流コストの削減は、無駄なコストや業務を見直すことにもつながります。単なるコスト削減にとどまらず、業務効率化や作業者の負担削減などが実現する改革を行うことが大切です。
ここからは、拠点の最適化、倉庫内作業の見直し、システム導入という3つの方法によるコスト削減事例を、紹介します。
拠点を見直し、自動化倉庫で物流コストが最適化
オフィスや学校向けの通販事業を営むジョインテックス様は、物流拠点である東日本センターにおいて、倉庫設備の老朽化や保管スペースの不足、出荷数の増大といった多くの課題を抱えていました。そこで、物流部門を一括受託しているプラス ロジスティクスでは、倉庫全体を自動化するリニューアルを提案・実施しました。
倉庫のリニューアルは、マテハンやシステムを一新できる好機です。ジョインテックス様の拠点見直し時も、新しい物流センターにはオートストアをはじめ、マテハン機器、倉庫システムを導入し、保管効率や品質の向上につなげました。倉庫内作業の多くを自動化でき、大幅な人的コストの削減、効率化を実現しています。
この事例についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
倉庫内作業を抜本的に改革することで物流コストが最適化
プラス ロジスティクスでは、オフィス家具などの大型商品を扱うオフィスコム様の東日本物流センターの運用を受託しています。以前より、誤出荷やフォークリフトによる商品の破損、棚卸の誤差が発生しやすいという課題があり、物流コストの増大にもつながりかねず、物流工程全体のオペレーションの改善が急務でした。
そこでプラス ロジスティクスでは、業務フローや作業マニュアル、倉庫内のレイアウトなどを徹底的に見直し、改善策を提案。トラブルや人的ミスが起こりにくい環境を整えました。これより、誤出荷率の低下や棚卸誤差の大幅な減少といった多くの成果があがっています。
この事例についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
独自開発したピッキングロボットで省人化が実現
切削工具・産業機器・バルブ・住設空調機器などの専門商社、ユアサ商事様の物流センターでは、約5万SKUもの商品を取り扱うため、物流を受託しているプラス ロジスティクスでも、物流工程を自動化できるところはないか模索していました。そこで、ユアサ商事様と、ロボットメーカーのPhoxter様、プラス ロジスティクスは共同で、ピッキング用自動搬送システム「ツインピック」を開発しました。
ユアサ商事様の倉庫では、ツインピックを導入したことにより、自動化エリアでのピッキングミス0件を達成。また、倉庫内を歩いてピッキングする必要がなくなったため、作業者の1日の歩数が最大約3万歩から1,000歩に減少しました。入庫作業でも大幅な効率化が実現し、物流センター全体で省人化と教育コストの削減に成功しました。
既存の倉庫にも導入が可能で、物流を1日も止めずに導入できることも、ツインピックの大きなメリットです。ツインピックは、新しい物流コストの削減方法として注目を集めています。
ユアサ商事様の物流センターでは見学会を開催しており、実際にロボットが稼働している様子もご覧いただけます。
物流コストの削減を検討するなら、プラス ロジスティクスにご相談ください
物流コストは、決してゼロにはできません。必要経費であることを踏まえた上で、削減できるポイントを見つけて改善していくことが必要です。
物流コストの削減を効率良く進めるなら、物流専門企業にコンサルティングを依頼するのが近道です。物流に関する豊富な知識を、コスト削減に役立てましょう。
物流専門企業のプラス ロジスティクスでは、荷主企業様のニーズに合わせた方法で、コスト削減のご提案が可能です。最新の物流システムの導入や、倉庫の稼働を止めない自動化の実現など、柔軟な方法で根本的なコスト削減につながる新しい物流を、全力でお手伝いいたします。