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物流において配送ルートに無駄があると、配送効率が低下し、人手不足やコストの増大といった多くの問題につながります。物流業務をもつ企業にとって、配送ルートの最適化は重要なミッションだといえるでしょう。しかし、最適な配送ルートを考える際に加味しなければならない条件は多岐にわたります。すべてを考慮した上で最適なルートを選定するのは、簡単なことではありません。
この記事では、配送ルートの最適化が難しい理由や、最適化によって得られるメリット、最適化するための具体的な方法などについて解説します。ドライバー不足や配送ルートの無駄が気になっている事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
配送ルートの最適化が必要な理由
物流を実施している企業は、労働力不足と物流の2024年問題という大きなふたつの課題を抱えています。この課題を解決するほか、物流コストを削減するためにも、配送ルートの最適化は欠かせません。
配送ルートの最適化が急がれる利用について、下記で詳しく解説します。
物流業界の労働力不足
物流業界では、トラックドライバーをはじめとする労働力不足が深刻化しています。
2022年9月のトラック運転者の有効求人倍率は2.12倍で、全職業平均の1.20倍を大きく上回っています。これは、求職者1人に対して2.12件の求人があるということです。それだけ「ドライバーを採用したい」と考えている企業数が多く、就職を希望する求職は少ないことがわかります。
※参考 厚生労働省「統計からみる運転者の仕事」
こうした労働不足の原因は、主に以下の4点です。
- EC市場の拡大
インターネットが広く普及したこととコロナ禍の巣ごもり需要によって、EC市場は右肩上がりの成長を見せています。個人がインターネットでショッピングを楽しむようになれば、その分、宅配便取扱個数も上昇します。再配達といった、BtoBでは生じにくい業務も発生しやすくなるでしょう。結果、従来よりも多くの労働力が求められることになります。
- 消費者ニーズの多様化
消費者のニーズが多様化したことで、多頻度小口配送が増加しています。これも、ドライバーの労働力不足に拍車をかける原因だといえます。
- 少子高齢化
少子高齢化が進む中で、今後、若い労働人口はどんどん減少していくことになります。必要な労働力を確保するのは、今以上に難しくなっていくことが予測されます。こうした中で、ドライバーの労働力不足はますます深刻化するといえるでしょう。
- 物流業界に対するマイナスイメージ
物流業界は、そのほかの業界に比べて低賃金や長時間労働といったマイナスイメージを抱かれやすい業界といえるかもしれません。実際のデータにおいても労働時間は全作業平均に比べて約2割多く、年収は全産業平均に対して5~10%低いという調査結果が出ています。労働時間が長く、年収の低い職種となると、働き手からは選ばれにくくなってしまいます。
経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(2022年)
「物流の2024年問題」への対応
物流の2024年問題とは、2024年4月からスタートしたトラックドライバーの時間外労働時間に対する規制によって生じる問題です。
2024年現在、トラックドライバーの時間外労働は年間960時間までに制限されています。これまで制限がなかった残業時間に上限が設けられたことで、ドライバーの稼働時間が減少していることは間違いないでしょう。
同時に、これまでは8時間以上だった勤務間インターバルについても、基本的に11時間以上で最低9時間以上に定められました。
こうした規制によって、ドライバー1人が1日に運べる荷物の量はこれまでよりも少なくなっています。物流を実施している企業が対処しなければ、売上の減少に直結します。ドライバーを増員して輸送力を確保するか、配送ルートや配送方法を見直した物流の効率化が必要です。
配送ルートの最適化が難しい理由
労働力不足や2024年問題への対応のためには、配送ルートの最適化が必要です。しかし、配送ルートの最適化は簡単には行えません。最適化が難しいとされる主な理由は、次のとおりです。
配送ルートの作成にはさまざまな条件を考慮する必要がある
配送ルートの作成は、次のような多くの条件を考慮して行わなければいけません。
- 配送先
- 荷物の種類
- 配達指定時間
- 道路の混雑状況や交通規制
- ドライバーの労働時間
- ドライバーの配置
- トラックの種類や積載量
こうした条件をすべて加味し、最適なルートを作成することは経験者であっても非常に難しい作業です。さらに、運行中に臨時の通行止めや再配達が生じることもあります。刻々と状況が変わる中で、効率良い配送ルートを再度検討しなければいけません。慣れない担当者が行おうとすると、時間がかかるだけでなく、そもそもベストなルートを見極められない可能性もあるでしょう。
配送ルート作成が属人的になっている
前述のとおり、配送ルートの作成は多くの条件を考慮する必要があるため、配送ルートづくりを経験豊富な人材のスキル任せにし、属人化している物流企業も少なくありません。膨大な数の候補の中から素早く最適な配送ルートを見つけ出すのは、非常に難易度の高い作業といえるでしょう。
小口配送や時間指定の荷物が増え、ドライバー不足が深刻化している中で、適切なルートを素早く作れるベテランの人材は今後どんどん貴重になります。新たにルートを作れる人材を育てようにも、長年の積み重ねをもとにしたスキルは、軽々に次世代に受け継げるものではありません。
配送ルートを最適化するメリット
配送ルートを最適化することで、少ないドライバーで効率良く荷物を配達できるようになります。これは、物流企業にとって多くのメリットにつながるでしょう。
ここからは、配送ルートを最適化するメリットを3点紹介します。
物流コストの削減
配送ルートの最適化は、コストの削減につながります。
例えば、配送ルートを最適化し、1人のドライバーが配達できる荷物の個数を増やせれば、人件費の削減が可能です。また、ルートの無駄をなくして走行距離を最短に抑えれば、ガソリン代などの燃料費や有料道路料金などのコストカットにもつながります。
さらに、在庫保管にかかるコストも削減対象です。荷物を倉庫に保管しておく期間を短縮できれば、それだけ保管コストは削減可能といえるでしょう。
ドライバーの労働環境改善
配送ルートを最適化すると、ドライバーの労働時間を改善できます。同じ個数の荷物を運ぶ場合でも、選択するルートによって最終的にかかる時間が大きく変わるからです。
配送ルートの最適化には、特定のドライバーに負担がかかりすぎるのを防ぐ効果もあります。「1人あたり◯個を配達する」「エリアごとの担当者を決める」といった方法で担当者を決めていると、道路状況などを加味した公平な配分ができません。あるドライバーだけに過度の負担がかかると無理が生じやすくなりますし、働きにくさにもつながります。全体の物量とエリアをもとに配送ルートを最適化すれば、ドライバー一人ひとりにかかる負担を分散することが可能です。
労働環境を改善すれば、新しい人材を確保にもつながります。働きやすい労働環境を整備して、労働力の確保を目指すことが求められます。
CO₂排出量の削減
配送ルートを最適化して走行距離が短くなれば、トラックから排出されるCO₂も少なくなります。
自動車や航空機、船などの乗り物が排出するCO₂排出量のうち、約2割が営業用トラックからのものです。物流業界にトラックはなくてはならないため、CO₂排出量をゼロにするのは困難でしょう。しかし、できる限り削減していくことは社会通念上必要です。
※参考 公益社団法人全日本トラック協会「トラック運送業界における認識と課題」(2021年)
配送ルートを最適化し、無駄な走行をなくしてCO₂削減を目指すことで環境問題に貢献できるだけでなく、環境に配慮している企業だという評価にもつながります。
配送ルートを最適化する方法
配送ルートは、従来、該当の道路状況などに詳しいベテランスタッフが作成していたことがほとんどでしょう。しかし、個人の知見に頼らなくても、ツールやアプリなどを活用すれば効率良く最適な配送ルートを作成することは可能です。ここからは、配送ルートを最適化する方法を紹介します。
ツールやアプリを使う
配送ルートの最適化ができるツールやアプリを導入すれば、さまざまな条件を入力するだけで簡単に配送ルートがわかります。近年では、実際のトラックの走行状況からデータを取得し、AIを用いて最適なルートを提案するアプリが多く登場しています。
トラックの位置情報や同労状況をリアルタイムで把握してルートを選定する機能や、トラックの容量や種類、荷物の時間指定、ドライバーの就業時間といった細かい条件を反映できる機能など、ツールやアプリによって多彩な機能が搭載されています。自社に合ったツールを見つけましょう。
プラス ロジスティクスが物流を請け負っている産業機械の専門商社の中部センターでは、Loogia配送システムを導入し、毎日の配送ルートを最適化しているほか、積載率が10%向上し、自社便の配送個口数が月間で15%拡大するなど多くの成果を上げています。
ほかにも、トラックドライバーに不可欠なアルコールチェックの測定結果や日報などを含めて一元管理できるツールもあります。用途に応じた選択をすることが大切です。
物流を一括して専門会社にアウトソーシングする
配送ルートを含めた物流工程すべての最適化を実現するなら、物流専門会社への委託が効果的です。プロならではの視点から、物流企業の抱える課題の総合的な解消と物流全体の効率化につながる改善を行います。
配送ルートの最適化を行う理由がドライバー不足にある場合は、配送ルートの最適化のみで対応できる可能性が高いでしょう。しかし、物流コストの削減を目指したい場合は、配送ルートの最適化だけでなく、総合的な物流工程の見直しが重要です。物流全体のコーディネートが可能な物流専門企業への相談を検討してみてください。
配送ルート最適化にお悩みの物流担当者は、プラス ロジスティクスにご相談ください
配送ルートを最適化するためには、該当のエリアに関する専門的な知識やノウハウが必要不可欠です。個人の知見に頼って配送ルートを選定し続けるのは無理があるでしょう。AIなどを活用したツールやアプリの利用を検討してください。
一方で、物流全体の効率化やコストの最適化を考えるのであれば、配送ルートにとどまらない総合的な物流戦略にもとづいた業務改善が効果的です。物流専門業者プラス ロジスティクスでは、お客さまの事情に合わせたオーダーメイドの物流設計をご提案しています。より効率の良い物流を実現するために、ぜひご相談ください。