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マテハンは物流工場や製造現場などでは耳にすることも多い言葉ですが、実際には本来の意味とは異なる用途で使われることも多くあります。
本記事では、マテハンの本来の意味や具体的な使われ方のほか、具体例、活用シーンなどについて詳しく解説します。マテハンを活用して、物流の最適化に役立てましょう。
マテハンとは材料や製品などの移動、搬送などの運搬する機器のこと
マテハンとは、一般的には、材料や製品などの移動に利用する機器である「マテハン機器」を指す言葉です。そもそもマテハンは、「マテリアルハンドリング」の略称。工場や倉庫などで、材料や製品を運搬する作業全般をマテリアルハンドリングと呼び、通常は倉庫内や工場内での移動を指します。
また、マテリアルとは「物」を意味する言葉なので、あくまでも材料や商品などの運搬が該当します。
一般的にマテハンは、マテハン機器そのもののことを指している
実際の物流や製造の現場でマテハンというときは、物の運搬作業ではなく、運搬に使用する機器、さらには倉庫内での機器全般を指すことがほとんどです。マテハンに使用される機器類である「マテハン機器」全般を略して「マテハン」と呼びます。
例えば「マテハン導入による効率化」といった場合、マテハンを物の運搬と捉えると、意味が通らなくなってしまいます。このときのマテハンはマテハン機器を指しており、「マテハン機器を導入して効率化する」という意味で使っていると考えるのが自然です。
なお、マテハンにはフォークリフトやコンベヤといった動力を有する機械類だけでなく、台車やドーリーのように人力で動かす物、さらに保管のための機器も含まれます。
マテハンが関わる業務とマテハン例
物流業務では、多くの作業にマテハン機器を活用しています。物流業界で行われる主な業務の内容と、それぞれの業務で活躍するマテハン機器の例を見ていきましょう。
保管業務に使われるマテハン機器
保管業務とは、倉庫などに商品を保管することです。商品の特徴に合わせた場所や温度、湿度などで保管する必要があります。また、商品の状態や在庫数を確認するための棚卸も定期的に行います。
■自動倉庫
物品の棚への入出庫・保管・管理を自動化した倉庫。機械が入出庫作業を行うため通路を確保する必要がなく、保管スペースの有効活用ができます。
■パレット
パレットは、荷物を載せるための台です。段ボールや荷物をパレットに載せて保管することで、移動が必要になった際にまとめて運搬できます。
■ネステナー
ネステナーは、パレットを積み上げて商品保管をする際に使う金属製のラックです。縦に高く積み上げて使えるため、倉庫のスペースを有効活用できます。荷物を載せたまま移動ができる「正ネステナー」と、移動はできない「逆ネステナー」があります。
積み込み・積み下ろし業務に使われるマテハン機器
積み込みとは、運搬する商品をトラックなどに整理して積み込むことです。一方、積み下ろしは、反対にトラックなどで運んできた商品を店舗などで下ろすことを指します。
効率良く積み込みや積み下ろしをするためには、カゴ車、オリコン(折りたたみコンテナ)といった道具が役立ちます。これらは、積み込みや積み下ろしを含めた幅広い用途に利用されるマテハンのうち、動力を持たないものです。一方、動力を持つマテハンには、下記のような物があります。
■パレタイザ、デパレタイザ
パレタイザとは、パレットに段ボールや袋物などの荷物を自動で積載することができる機材を指します。パレタイザの種類は、パレットに荷物を積み込むための機械コンベヤやリフターを利用して荷物を積む処理能力の高い「機械式パレタイザ」と、ロボットアームを利用して柔軟な操作ができる「ロボット式パレタイザ」の2種類。また、パレットの荷物を下ろすための機械は、デパレタイザといいます。
■フォークリフト
フォークリフトは、車の前面に取りつけられたツメをパレットの下に差し入れて持ち上げることで、重い荷物を簡単に運ぶことのできるマテハン機器です。荷役自動車と呼ばれる物で、操作にはフォークリフト免許が必要です。ただし、近年では自動運転技術を活用した無人フォークリフトも登場しています。
■コンテナスロープ
コンテナスロープとは、輸出入の際にコンテナなどにフォークリフトで乗り入れることのできるスロープのこと。ベルトコンベヤなどを接続して荷物の積み込みや取り出しをしやすくすることもできます。バンステージ、バンニングスロープなどとも呼ばれ、作業員の負担を減らし、少人数での対応が可能になります。
運搬・搬送業務に使われるマテハン機器
運送や搬送とは、ある地点から別の地点に荷物を運ぶことです。倉庫内の荷物の移動にも、多くのマテハン機器が利用されています。
■カゴ車
カゴ車は、三方を柵で囲われたスチール製の台車です。荷物を重ねて運搬する際に荷崩れが起こりにくく、安定した状態で運ぶことができます。
■運送系ロボット
物を自動で目的地まで運ぶ機械が運送系ロボットです。床にあらかじめ磁気テープなどを貼っておき、決まったルートを走らせる「無人搬送ロボット」と、レーザーや画像認識で周辺の状況を検知しながら自動走行する「自律走行ロボット」があります。
■コンベヤ
一定の方向に一定スピードで荷物を運べる機械がコンベヤです。回転するローラーやベルトなどの上に荷物を載せて運搬するため、運搬させたい箇所にコンベヤを敷く必要がありますが、高低差がある所でも完全自動で商品を運べるため、効率化に大きく寄与します。
■天井走行車
天井走行車は、天井に敷いたレールを走る台車です。デッドスペースになりがちな天井の空間を活かして、ピッキングや荷物の運搬を自動化できます。
仕分け・ピッキング業務に使われるマテハン機器
多くの商品を出荷先ごとに振り分ける作業を仕分け、受注があった荷物を倉庫の中から取り出すことをピッキングと呼びます。混同しがちな言葉ですが、例えば商品1,000個を10件の納品先の受注個数に応じて分ける場合は「仕分け」、商品Aを10個と商品Bを5個という受注が入ったときに保管場所から数どおりの商品を持ってくる場合は「ピッキング」というように使い分けます。
仕分けやピッキング業務で活用されている主なマテハン機器は、下記のとおりです。
■ソーター(自動仕分け機)
ソーターは、出荷先や商品名といったあらかじめ指定した条件に合わせて商品を仕分けする機械です。ベルトコンベヤやロボットなどと組み合わせて、商品を運搬しながら出荷先別に仕分けを行います。
■オートラベラ
商品の出荷時に必要なラベルの自動印刷と貼付を行う機械がオートラベラです。規定の位置に正確にラベルを貼ることができます。
梱包業務に使われるマテハン機器
梱包とは、商品を出荷する際に、必要に応じて緩衝材などを使用して段ボールなどに入れる業務のこと。緩衝材の種類に応じたさまざまなマテハン機器が活用されています。
■自動製函機
段ボール箱を自動で組み立てる機械が、自動製函機です。箱の組み立てから底面のガムテープ貼りまでを自動で行う「全自動製函機」と、テープ貼りだけを行う「半自動製函機」があります。
■自動封函機
自動封函機とは、商品を梱包するための機械のことです。商品サイズを自動認識して、段ボールや袋を適したサイズに調整することができます。調整後は商品を自動投入して、ステープル止めやテープ貼りで箱や袋を閉じます。
■エアー緩衝材製造機
エアー緩衝材製造機は、緩衝材を作るための機械です。専用フィルムに空気を入れることで、スピーディーに緩衝材を作れます。
マテハン導入のメリット・デメリット
マテハンの導入は、物流業務の効率化に役立ちます。これまで人の手で行っていた業務をマテハン機器で自動化することで、業務をスムーズかつスピーディーに行えるようになるのは大きなメリット。作業にかかる労力と時間を短縮できますし、自動制御のマテハン機器を導入すればヒューマンエラーも起こりにくくなります。
さらに、マテハンを導入して作業効率が上がり、必要な人員が少なくなれば、コスト削減も可能に。マテハン機器の導入には初期コストとランニングコストがかかりますが、長期的な人件費の削減や作業効率アップ、ミスの軽減による売上の向上が期待できます。
デメリットとしては、自動制御のマテハン機器でトラブルが発生した際の影響が挙げられます。大掛かりなマテハン機器を導入し、トラブルが発生すると、業務がすべて止まってしまいかねません。人力でカバーするのが難しいケースも起こりえます。日頃からマテハン機器のメンテナンスを適切に行うことや、トラブル発生時に原因を突き止めて再発防止策をとることなどが大切です。
マテハン機器と組み合わせて活用されるシステム
物流の現場では、マテハン機器とさまざまなシステムを組み合わせることで、効率化を図っています。ここでは、特に人手が必要でミスの許されないピッキング業務で活用されているシステムをご紹介します。
DPS
DPSとは、デジタルピッキングシステムのこと。棚にあらかじめデジタル表示器を取りつけておくことで、ピッキングの際に取り出す必要のある商品数を自動表示させられます。摘み取り方式のピッキングを行う際、保管場所をいちいち覚えたり探したりする必要がなくなるため、ピッキングの効率アップとミスの防止に役立ちます。
DAS
DASは、デジタルアソートシステムの略称です。商品の仕分けや、あらかじめ必要な商品の総数を用意して納品先別に振り分ける種まき方式のピッキングに利用します。
DASを利用する際は、あらかじめ商品振り分け用の棚にデジタル表示器を設置しておく必要があります。その後、商品のバーコードをハンディーターミナルで読み取ると、デジタル表示器に必要数が表示される仕組みです。商品を置いてボタンを押すと、仕分け完了がシステムに通知されて次の商品の仕分けに移ります。どこに何をいくつ納品するのかを調べる必要がなくなるため、仕分けミスの防止と効率化に役立つでしょう。
SAS
SASはシャッターアソートシステムの略称で、商品の仕分けに利用するマテハン機器です。DASと似たシステムですが、商品を投入する箱にシャッターが設置されている点が異なります。SASでは、商品のバーコードを読み取った際、投入が必要な箱のシャッターのみが開きます。
ピッキングについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
マテハンの導入、ご相談はプラスロジスティクスグループへ
大掛かりなマテハンの設計や導入には、十分な物流設計が必須です。
それぞれのお客様の事業に合ったマテハンの導入、ご相談は、物流のオーダーメイド設計を行うプラスロジスティクスグループにお任せください。倉庫の環境や扱う商材に応じたマテハンのご提案と導入支援で、物流業務の最適化をサポートします。
マテハンに関するよくある質問
- Q1_マテハンとは?
- マテハンとは、一般的には、材料や製品などの移動に利用する機器である「マテハン機器」を指す言葉です。そもそもマテハンは、「マテリアルハンドリング」の略称。工場や倉庫などで、材料や製品を運搬する作業全般をマテリアルハンドリングと呼び、通常は倉庫内や工場内での移動を指します。
- Q2_マテハン導入のメリットは?
- マテハンの導入は、物流業務の効率化に役立ちます。これまで人の手で行っていた業務をマテハン機器で自動化することで、業務をスムーズかつスピーディーに行えるようになるのは大きなメリット。作業にかかる労力と時間を短縮できますし、自動制御のマテハン機器を導入すればヒューマンエラーも起こりにくくなります。
- Q3_マテハン機器の種類には何がある?
- マテハン機器には、物流や倉庫の効率化を支援するさまざまな種類があります。代表的なものには、自動仕分け機(ソーター)、自動倉庫(AS/RS)、コンベヤシステム、パレタイザー、フォークリフト、AGV(無人搬送車)などがあり、それぞれが異なる作業を効率化する役割を果たします。