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流通加工とは、流通の過程で行われる商品への加工作業のことです。商品に付加価値を与えたり、流通に適した形態にしたりするために行われます。
流通加工は、メーカーではなく、物流倉庫や店舗などが担います。物流における流通加工の業務内容や目的、流通加工をスムーズに行えるアウトソーシングのメリットなどについて見ていきましょう。
流通加工とは、商品の価値を高めるために物流倉庫内で施す加工のこと
流通加工とは、メーカーや生産地で作られた商品を流通の過程で加工することです。商品をより利便性が高く販売しやすいようにしたり、商品価値を高めたりするために行われます。
野菜のじゃがいもを例に考えてみましょう。じゃがいもは生産地で収穫後、まとめて大きなコンテナに詰めて出荷します。しかし、大量のじゃがいもがコンテナに詰め込まれている状態では、小売店で扱いにくかったり、消費者が手に取りにくかったりして、販売に支障が生じます。そこで、小売店に運ばれる前の物流倉庫で、じゃがいもを5個ずつ袋に包装。パック売りしやすいように、加工をします。
このように、販売に適した加工を流通の過程で行うことが、流通加工です。
流通加工にはどのようなものがある?
流通加工には、業種によってさまざまな種類があります。ここでは、いくつかの具体例をご紹介します。
<流通加工の主な例>
- 文房具を「新入生セット」として、えんぴつと消しゴムを袋詰めして包装する
- 商品に「日本製」「10%増量中」などの案内シールを貼る
- 鉄鋼やガラスなどの部材を運びやすく裁断する
- アパレル製品にタグを取り付ける
- 小物類などを組み立てる
- 商品にシュリンク(透明フィルム)やリボンをかける
流通加工は、取り扱う商品や物流倉庫によって対応範囲が変わります。流通加工のうち、特に販促のために行う「包装」「シュリンク」「アソート」「ラベリング」などは、「販促加工」と呼ばれます。一方、製品の組み立てなどは「生産加工」です。
なお、専門性の高い設備を備えた物流倉庫では野菜や肉類のカットなどを行うケースもあります。製品に直接手を加える業務については、「物流」ではなく「製造」の範疇だと考えられます。
流通加工の目的
流通加工にはさまざまな種類がありますが、究極的な目的は「顧客からの信頼を勝ちえて、選ばれるブランドになる」ということです。適切な流通加工で他社との差別化を行い、顧客からの支持を獲得することが狙いです。流通加工の目的について、具体例を挙げながら詳しく解説します。
商品の付加価値を高めるため
元の商品が同じでも、流通加工の有無によって顧客にとっての商品価値が変わることがあります。商品に付加価値を与え、顧客にとってより魅力的なものになるように行う加工が、流通加工です。
例えば、「お世話になった人に気軽なお礼としてプレゼントを渡したい」というケースについて考えてみましょう。たくさんあるアイテムから、顧客は商品を選び出すことに迷いを感じることもあります。
顧客がプレゼントとして商品を選びやすく、また購入しやすい価格帯の詰め合わせセットを作り、あらかじめラッピングをしておけば、顧客は手軽に必要なものを手に入れられます。バラバラで売られていたら販売機会を失っていたアイテムが、セット売り、ラッピング済み商品として付加価値が与えられ、顧客が手に取りやすくなるというわけです。
同時に必要になる可能性が高いものをセット売りにする、商品にキャンペーンの告知シールを貼るといった加工も、商品の付加価値を高める流通加工に該当します。
顧客の作業負担を軽減するため
流通加工によって商品の完成度を高めることで、購入後の顧客の手間を省く効果を得られます。
例えば、前述のプレゼントの例でも、あらかじめ商品をセットにしておくことで、顧客自身が別の袋に詰め替えをしたり、ラッピングしたりといった手間を省けるでしょう。
また、家具の組み立てを行う流通加工では、部材の状態で顧客に販売するのではなく、組み立て済みの製品にしてから販売。野菜のカットや皮むきを流通加工で行うことも、購入後の顧客の負担を軽減し、利便性を向上させています。
できるだけ顧客の手間を省き、便利な状態に加工しておくことで、商品に手を伸ばしてもらいやすくなったり、顧客満足度が向上したりといったメリットが得られるのです。
商品の信頼性を高めるため
検品や検針も、広い意味では流通加工に該当します。商品に不備がないか確認して、問題があれば取り除くことで、商品の信頼性を高めることができるでしょう。
検針とは、アパレル業界で行われる「製品に針が残っていないかどうかを確認する業務」です。万が一、商品に折れた針などが残っていると、顧客のケガにつながりかねません。
ECサイトでは、ひとつのミスが大きな炎上やトラブルを招きます。顧客に安心して利用してもらえるように、検品と検針を徹底して行う必要があるのです。
流通加工の課題
顧客に多くのメリットを提供できる流通加工ですが、加工を行う事業者としては課題もあります。
続いては、自社で流通加工を行う場合に起こりがちな課題についてご紹介します。
設備を置いたり作業したりするためのスペースの確保
流通加工には、行う加工の内容に応じた設備や梱包材などの用意が必要です。また、当然ながら作業スペースも確保しなければいけません。十分なスペースがない中で流通加工を行おうとすると、商品の破損を招いたり、事故の原因になったりする可能性があります。流通加工で必要となるスペースの例を見てみましょう。
<流通加工で必要なスペースの例>
- 加工用機械を設置するスペース
- 段ボールの保管スペース
- ベルトコンベアの設置スペース
- 作業員が梱包するための作業スペース
まずは、自社で行う流通加工に必要な設備や梱包材とサイズを確認することが必要です。次に、該当の設備や梱包材を作業スペースに配置した上で、十分な作業スペースを確保できるかどうかをチェックします。
スペースに余裕がないと、業務が拡大した際にスペースが足りなくなる可能性もありますので、余裕あるスペースを用意しておくことをおすすめします。
人的リソースが足りない
流通加工の多くは人の手が必要で、人的リソースを割かなければいけません。
機械を導入すれば効率良く、スピーディーに少ない人員で加工が可能ですが、設備の導入費やスペースが必要です。また、細かい作業や商品に応じた対応が必要な作業については、機械での対応ができなかったり、一部の作業でしか機械化できなかったりすることもあります。
こうした業務を行うためには、それまで別の業務に対応していたスタッフを流通加工に回したり、流通加工のためのスタッフを新規雇用したりすることが必要です。しかし、それには多くの人件費がかかります。
一般的に、自社の人員は、売上に直接関わる商品企画やマーケティング部門に配置したほうが業務拡大を目指しやすくなります。限られた人的リソースを流通加工に回すことは、本末転倒になりかねません。
流通加工にかかるコストが高い
自社で流通加工を行おうとすると、設備費や人件費といったコストが生じます。特に流通加工を自社で行う初期に、設備費に加えて設備を設置するためのスペースの確保や、作業を行う人員の獲得と教育といった多大なコストを支払うことが必要です。
「なるべくコストをかけずに社内の人員で対応する」といった方法もありますが、限られた設備やスペース、人員で対応しようとすると、結局商品価値につながる十分な加工ができなかったり、商品価値の向上よりも支払うコストが高く見合わない結果に終わったりすることも。
また、商品数が一定以上になると、どうしても対応しきれないといった問題も出てきます。
流通加工をアウトソーシングするメリット
コストがかかったり、専門の知識がないと対応できなかったりする流通加工は、物流専門企業にアウトソーシングすることで効率化を図ることができます。流通加工のアウトソーシングによって得られるメリットは下記のとおりです。
人的リソースを本業にあてることができる
流通加工をアウトソーシングすれば、自社の人員を流通加工業務に従事させる必要がなくなります。人的リソースを売上に直結する部門に回せるようになるため、業務拡大や売上アップを目指しやすくなるでしょう。
また、季節によって物流が変わる業種では、繁忙期や閑散期などに合わせてスタッフの臨時雇用をする必要もなくなります。採用や教育などに時間を割くことなく、必要な人員で、必要量の流通加工をスムーズに行うことが可能です。
高品質な流通加工が可能に
流通加工の種類の中には、専門的なスキルを要する業務も少なくありません。該当の商材や加工法に精通したアウトソーシング先のスタッフなら、高品質な流通加工を手間なく行えます。
流通加工に必要な設備もそろっていることから、作業スタッフの熟練度によって流通加工の精度が変わるリスクが低いこともメリット。できるだけ人の手に頼らないシステムを活用することで、流通加工のスピードや効率も良くなります。
初期投資を抑え、コストの無駄を省ける
アウトソーシングを利用すれば、自社で流通加工に必要な設備を購入したり、スペースを確保したりする必要がありません。初期投資を抑え、少ない負担で顧客の益につながる流通加工ができます。繁忙期に「臨時でスタッフを補充し、教育して現場に入ってもらう」といったことも不要になるため、人件費の削減にもつながります。
なお、物流アウトソーシングの多くは、利用した分だけ料金が発生する従量課金制です。流通加工の物流量が多いときと少ないとき、それぞれに応じた費用を支払えば良いので、無駄が出ることはありません。コストの見積もりもしやすくなります。
流通加工をアウトソーシングするデメリット
流通加工のアウトソーシングには、デメリットもあります。事前に十分な打ち合わせやシミュレーションをしておくことで、回避できる内容です。流通加工のアウトソーシングに関するデメリットと回避策を見ていきましょう。
認識違いによる品質の低下
流通加工のアウトソーシングでは、加工内容について綿密な打ち合わせが必須です。曖昧な指示のまま作業を進めてしまうと、認識違いによって品質が低下したり、本来希望していたのとは異なる加工が行われてしまったりするリスクがあります。
事前にアウトソーシング先と認識のすり合わせを行うとともに、コミュニケーションを密に交わすことができる信頼の置けるパートナーを見つけることが大切です。
委託することによるコストアップ
流通加工をアウトソーシングすると、外注費が発生します。自社で対応する場合に比べ、設備投資や人件費などを抑えられる反面、別のコストが生じる点には注意してください。
アウトソーシングによって発生する費用と、自社で対応した場合の費用について、繁忙期と閑散期を含む年間の見積もりを比較することが必要です。
また、アウトソーシングによって流通加工の品質が向上すれば、それによるクレームの発生割合の低下や売上アップが図れる可能性もあります。こちらは目に見える数字としては比較しにくい部分ですが、総合的にどの程度コスト面の変化があるのかをできるだけ正確にシミュレーションし、費用対効果について検討してください。
なお、委託費を抑えたい場合は、外注する範囲を限定的にするといった対応も可能です。プラスロジスティクスグループでは、コスト面も含め、それぞれの事業者の希望にマッチする最適な方法をご提案いたします。
プラス ロジスティクスグループならプロによる流通加工が可能
流通加工は、さまざまな業種によって内容は異なりますが、商品価値を高めるために必須の工程です。流通の専門業者に任せることで、高品質かつ効率の良い流通加工が可能になります。流通加工が十分に行えていない、流通加工の効率化を図りたいといった希望をお持ちのお客様は、ぜひプラス ロジスティクスグループまでご相談ください。
プラス ロジスティクスグループは、幅広い商品に精通した物流専門会社です。取り扱い商材に応じた高品質な流通加工をはじめ、お客様の希望に合わせた柔軟な物流設計をご提案しています。
流通加工の品質向上に、プラス ロジスティクスグループのサービスをご利用ください。