SPD業務とは?院内配送の仕組みやアウトソーシングのメリットを解説

この記事は、 7 分で読めます。

病院やクリニックでは、診療で必要とする医薬品や医療消耗品、そのほか必要とする物品の数は非常に膨大で、種類も多岐にわたります。医療機関で使用・消費するすべての物品の発注、保管、在庫・品質管理、供給、さらにデータ管理までを包括的に支援する業務をSPD(Supply Processing and Distribution)業務といい、専門の部署を設置する病院が増えています。

自院でSPD業務を行う運用のほか、SPD業務を受託する物流専門企業にアウトソーシングすることもでき、合理的で安定した病院運営が可能となります。この記事では、SPDの仕組みや、SPDを導入するメリットのほか、アウトソーシングサービスについて解説します。

 

 

SPD業務とは医薬品や医療消耗品などを供給するための業務全体のこと

SPDとは、「Supply(供給)」「Processing(加工)」「Distribution(分配)」の頭文字を取った言葉で、SPD業務は、医療機関で使用される医療品や医療消耗品などの物品を各部署へ供給し、包括的に管理する業務を指します。

大学病院などの大規模な医療機関では、日々の診療に使用する医薬品、医療消耗品、医療器材の数や種類は多岐にわたり、膨大なものです。SPD業務は、この多種多様な医薬品や医療消耗品などをデータ管理し、発注から在庫・品質管理、運搬管理などを行います。院内物流管理システムは、これらの業務を効率化し、正確かつ迅速なサービスを提供するためのシステムです。

病院には各診療部門や手術室など多くの部署がありますが、それぞれの部署で個々に医薬品などを購入・管理するのは不経済で非合理的といえます。SPDを取り入れることにより、滞りのないスピーディーな治療が可能となり、医療従事者は患者へのケアに専念でき、医療機関全体のサービス向上につながります。

 

SPD業務で管理する対象

SPD業務は、医療現場で使用するあらゆるものの調達、使用、消費、補充の物流を管理するのが目的です。管理する物品は、多種多様な医薬品、医療機器のほか、滅菌物、リネンアイテム、伝票、文房具など、医療現場で使う物品のすべてを含みます。

 

SPD業務の運用方法

SPD業務の運用は、さまざまな方法があります。対象物品を病院が購入するのか、外部の医療品卸業者の預託品なのか(物品を実際に使用・消費した後に決済)、管理業務を行うのは病院のスタッフなのか外部機関から送られた常駐スタッフなのか、物品を管理するのは外部の物流センターなのか院内の専用ルームなのかなど、さまざまなパターンが考えられるでしょう。

 

いずれにしても、効率性と収益性を追求するために適切な運用方法、自院になじみやすい方法を選ぶことが重要です。最適な運営方法を実践することで合理的な病院運営が実現し、安全な看護サービスを高めることができます。

 

 

SPD業務の内容

 

SPD業務の内容

 

安全で安定的な病院運営のために必要なSPD業務。扱う物品が多岐にわたるため、その業務も多種多様です。続いては、SPD業務の主な内容を見ていきましょう。

 

物品の発注、在庫管理、品質管理

物品の発注、在庫管理、品質管理とは、医薬品や医療消耗品などの物品の在庫状況や消耗品の管理を一元化し、適切な品質と数量の維持をサポートする業務のことです。具体的には、院内の各部署における医薬品、医療消耗品などの在庫管理、供給管理、定数管理、補充管理、品質管理、期限管理を行うほか、各部署や患者ごとの使用量の把握、発注・受け入れ管理、滞留品の把握を行う場合もあります。

物品の発注を行う際は、外部の医薬品メーカーや医薬品卸業者とのやりとりを一手に担い、一括購入することで仕入れ価格の軽減も叶えます。また、保管スペースの削減も可能です。

 

使用部署への搬送

使用部署への搬送とは、各部署の診療で必要とする物品を、適時適切に配送をする業務のこと。医薬品、医療消耗品のほか、滅菌済み製品の配送ルートやスケジュールを管理し、適切なタイミングでの配送、配送先の正確な把握、配送状況の追跡なども実施します。専門のスタッフが行うことで、医療従事者の負担が軽減することも期待できます。

 

データ分析と改善策の策定

データ分析とは、過去のデータをもとに最適な物流プロセスを見直し、効率化やコスト削減の機会を提供する業務を指します。データ分析はSPDシステムを利用し、発注業務を簡便化するほか、院内トータル在庫の把握、医療請求漏れ防止、定数管理などにつながり、支出の適正化、医療サービスの質を高めることが可能です。

 

 

SPD業務を運用するメリット

医療機関が適切な医療を提供するための根幹となるSPDは、医療従事者の負担軽減につながるほか、「院内物流」という切り口で効率化によるコストダウンを実現します。SPDを適切に運用するメリットは、下記のとおりです。

 

 

医療業務の質向上につながる

SPDを導入することで、医療機関で実施する医療の質、安全性、経済性・生産性を高めることができます。適切なタイミングで必要とされているものをスピーディーに供給することで、高水準の医療を実施でき、医療ミスを防ぐことにもつながります。

物品の管理は専門のスタッフが行うことで、医療従事者が本来の業務である医療サービスに集中することが可能です。

 

コストを適正化できる

各部署で必要とする医薬品や医療消耗品、さまざまな物品を一括管理することで、組織立った管理体制が可能となり、必要最低限の数で購入することができるのでコスト削減にもつながります。また、各部署でかかる手間を削減することができ、人件費や時間コストの圧縮が可能に。欠品の防止、使用期限の管理、不良在庫の圧縮も期待できます。

さらに、高度な品質管理によるメリットもあります。例えば、ベッド用のシーツや寝巻きについて、専門スタッフによる優れた滅菌技術と一括管理によって感染リスクが軽減されることで、患者の再入院や入院の長期化を防ぐことも可能です。

 

データ管理で業務が効率化できる

SPDを導入することにより、物品別使用頻度、病棟別使用実績、材料単価の試算などをデータ管理することができ、物品ごとの5W1H、つまり「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」が明確になります。

医療情報や消費情報を分析し、各部署に散らばっていた情報が整理されることで、物品アイテムのスリム化が可能に。物品ごとの年間の使用量や部署ごとの消費量、物品の特性を把握することもできます。

 

 

SPD業務を物流専門企業へアウトソーシングするメリット・デメリット

SPD業務の運用は自院で行うほか、外部業者へアウトソーシングするケースがあります。中でも近年注目を集めているのが、物流専門企業によるSPDの受託です。

 

物流専門企業であれば、元々得意としている物流のノウハウ、最新のシステムをもとに、ベストなSPDの運用をすることができます。多種多様な物品の物流の動線を整理することができ、適正な在庫管理が可能に。特に、医薬品や医療機器の繊細な扱いに慣れている物流企業であれば、医療機関の要求に応えながら効率的なSPD業務を実現します。専門業者ならではのデータ分析が可能となるのも魅力です。

 

ただし、外部業者にアウトソーシングするにはコストがかかり、外部スタッフが院内に常駐することになる点はデメリットといえます。物品の調達先を自院で選定することができなくなることもネックになるかもしれません。SPDの運用については費用対効果を見込めるのかを検討し、慎重に判断してください。

 

医療品物流、医療機器物流についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

医療機器物流とは?管理方法や輸送技術、医薬品物流で扱う商材を解説

 

 

SPD業務に課題を感じたらプラス ロジスティクスグループにご相談ください

大規模な医療機関では、院内物流や院内物品の管理は大きな課題です。医療従事者、特に看護師にとって本来の業務時間を阻害するものではありますが、SPD業務が滞ると適正な治療ができなくなってしまいます。物流に長じた専門企業に一括でアウトソーシングすれば、医療従事者のリソースを看護業務に集中することができ、病院経営の健全化が期待できます。

 

プラス ロジスティクスグループは、これまでの物流ノウハウを活かし、SPD業務を受託する物流専門企業です。医療機関ならではの課題や困り事に対応したシステムづくりのほか、オリジナルの運用もお任せください。プロ目線でSPD業務に取り組むことで、円滑で効果的な院内物流を支えます。課題感がある医療機関の方は、ぜひ一度お問い合わせください。

 

プラス ロジスティクスへのお問い合わせはこちらから

RELATED