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EC物流代行とは、ECサイト事業者に代わって専門企業が物流業務を代行するサービスのことです。商品の入荷・保管・出荷・配送など、一連の物流業務を外部委託することで、EC事業者は物流業務にかかる負担やコストを削減することができます。
この記事では、EC物流代行にはどのようなサービスがあるのか、また利用することでECサイト事業者にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかについて、詳しく解説します。
EC物流代行とはECサイト事業者に代わって専門企業が物流を代行するサービスのこと
EC物流代行とは、ECサイト事業者に代わって専門企業が入荷、出荷、配達などの物流業務を代行するサービスのことです。
コロナ禍以降、通販・EC市場の売上は増加が続き、今後もその市場は拡大することが予想されています。インターネットで商品を販売するECサイト事業者は、さまざまな大型ECサイトに同時に出店したり、複数のブランド展開を行ったりすることが多いため、それぞれのECサービスやショッピングカートシステムを利用することになります。また、実店舗や電話注文での販売にも同時に対応することもあるでしょう。
取扱商品数が増え、販売チャネルが複雑化する中、スピーディーに受注業務を行い、顧客に正確な商品を届けるためにも、一連の物流業務を外部委託するECサイト事業者が増えています。そうすることで、EC事業者は物流業務にかかる負担やコストを削減することができ、商品開発やマーケティングなどの本業にリソースを割くことも可能になります。
参考:日本通信販売協会「2022年度通販市場売上高調査」(2023年8月)
EC物流代行の特徴
インターネットで商品を販売するECサイト事業者を対象にしたEC物流代行は、単なる物流代行とは異なる特徴があります。EC物流代行ならではの特徴は、下記のとおりです。
オムニチャネル対応
オムニチャネルとは、顧客が商品やサービスを利用する際のあらゆるチャネルをシームレスに連携させ、顧客体験を統合する戦略のことを指します。
ECサイト事業者は、自社の販売ページのほか、さまざまな大型ECに出店したり、実店舗を持っていたり、SNS経由での販売を行ったりするなど、複数の販売チャネルを持っていることが大きな特徴です。EC物流代行を利用することで物流業務を一括外注できるほか、多様化した複数のショッピングカートや顧客の情報を、API連携による受注管理システムで一元管理。データの解析が容易になり、ニーズや状況に合わせたサービスの展開にすることにつながります。
EC物流代行業者には受注から梱包・発送、さらにさまざまなデータ管理を一括でアウトソーシングできるため、ECサイト事業者は自社で物流を行う手間がなくなり、物流に関わるコストをカットすることも可能です。スムーズな物流が実現して顧客満足度が上がるほか、さまざまなチャネルを横断した顧客情報を効率的に獲得できるため、売上拡大の可能性が高まるほか、次のサービスをスピーディーに展開することができます。
小ロット・多品種の物流管理が可能
小ロット・多品種の商品を扱うEC物流事業者が、自社で在庫管理・物流管理を行うことは負荷が高く、非効率的といえます。
EC物流代行業者は、専門的なノウハウとシステムを有しているため、小ロット・多品種の注文にも柔軟に対応することが可能です。在庫管理も専門システムで効率的に行うことができるため、在庫切れを起こすことなく、正確な物流を任せることができるでしょう。
顧客満足度が向上するスピーディーで正確な配送
EC物流代行業者は、例えばバーコードやRFIDなどの自動識別技術を活用することで、商品の誤送や破損を防止できます。経験豊富なスタッフがプロならではの厳しい品質管理も行うため、配送トラブルを未然に防ぎ、正確な配送を行うことも可能です。
EC物流代行業者は複数の物流拠点を持っていることが多いため、最適なルートで配送することもできます。正確に、そしてスピーディーに商品が届くことは、顧客にとってもうれしいことです。物流の品質が向上するとともに顧客満足度が向上することも期待でき、ブランドの固定客を作ることにも貢献します。
EC物流代行業者のサービス内容
ECサイト事業者が、EC物流代行業者を利用する際のサービス内容はどのようなものがあるのでしょうか。EC物流代行業者によって展開するサービスはさまざまですが、よく行われているサービス内容は下記のとおりです。
入荷・検品
入荷・検品とは、商品を倉庫で受け入れ、数量や状態を確認することです。同時に商品を検品し、商品の破損や欠品などの不良品がないかを確認します。
保管・在庫管理
保管・在庫管理とは、入荷した商品を決められた棚などに移動して保管し、適切に管理することです。商品を適正な数と状態で管理することを在庫管理といい、欠品による機会損失や過剰在庫によるコスト増加を防ぐことができます。在庫は過剰に保有することもコストアップにつながるため、適切な在庫管理をすることが求められます。
受注管理
受注管理とは、顧客からの注文を受け、その注文を処理する一連の業務のことです。顧客からの注文をECサイトやメール、電話で受け付け、注文内容を確認。出荷指示を正確に出します。
専門システムを使用することで受注の漏れやミスを防ぎ、適切なタイミングで出荷指示を出すことが可能です。
ピッキング・梱包・出荷・配送
出荷指示を受け、商品をピッキングし、送付先ごとに梱包・出荷を行います。正確なピッキングこそが正しい配送につながるため、経験豊富なスタッフによる技量が問われる業務です。
ピッキング後は、商品の破損や汚れを防ぐために丁寧に梱包を行います。さらに、商品のサイズや重量、配送先などの条件に合わせて、最適な配送業者を選択。配送業者によって顧客のもとへ商品が届けられます。
カスタマーサポート
カスタマーサポートとは、ECサイトを利用する顧客からの問い合わせやクレームに対応するサービスのことで、顧客満足度を向上させるために重要な役割を果たします。ECサイト事業者によるカスタマーサポートの具体的な業務内容は、下記のとおりです。
- 問い合わせ対応
顧客からの問い合わせに対応します。問い合わせの種類としては、商品の注文や配送に関する問い合わせ、商品の使い方に関する問い合わせのほか、会員登録やログインに関する問い合わせなどがあります。
- クレーム対応
顧客からのクレームに対応します。クレームの種類としては、商品の不良品に関するクレーム、配送トラブルに関するクレーム、商品の返品・交換に関するクレームなどがあります。ECサイト事業者に代わって、EC物流代行業者が顧客に誠実に対応します。
- アンケート対応
アンケート対応とは、顧客満足度調査や商品のレビューなどのアンケートを実施することです。アンケートを通じて顧客の声を収集し、ECサイト事業者に提出。商品やサービスの改善に役立てることができます。
データの正確な管理・分析
EC物流代行業者は、ECサイト事業者から委託を受けて物流業務を代行するサービスの中で、顧客情報や商品情報などのデータを預かり、適切に管理することが可能です。
業者によってはデータを管理するだけでなく、高度な分析を行って取りまとめて提出。ECサイト事業者はそれらのデータを利用し、顧客満足度や売上向上、業務の効率化などに活用することができるでしょう。
EC物流代行業者に委託するメリット
多くのサービスを展開するEC物流代行業者を活用することで、さまざまなメリットがあります。具体的なメリットは下記のとおりです。
リソースの適正化
ECサイト事業者が、自社で物流業務のすべてを行うには多くのリソースが必要となり、物流が増えると本業を逼迫してしまう可能性があります。物流業務を切り離し、EC物流代行業者へ委託することで本来の業務に集中することができ、リソースの適正化を図ることが可能です。
コスト削減
EC物流代行業者へ物流業務を委託することで、ECサイト事業者が物流に関わる人件費や倉庫維持費、配送費用などのコストを自社で用意する必要がなくなります。委託料はかかりますが、将来的に自社で物流を担う予定がないのであれば、費用対効果を比較し、導入を検討するのがおすすめです。
物流機能のレベルアップ
EC物流代行業者は、物流を専門にするプロ集団です。EC物流代行を利用することで、経験豊富なスタッフによる高度な技術、最新の専門システムによる正確な業務遂行、物流を知り尽くしたプロによる最適なコンサルティングを受けることが可能となり、物流機能がレベルアップすることでしょう。
イレギュラー時の対応
EC物流代行業者に委託することで、繁忙期の対応やキャンセル・返品・クレームといったイレギュラーな対応も可能です。さまざまなサービスを展開している事業者でも、依頼したい内容に応じて業務範囲をアレンジすることができます。
EC物流代行にアウトソーシングするデメリット
メリットの多いEC物流代行ですが、利用する前に知っておきたいデメリットもあります。EC物流代行にアウトソーシングする際に生じる可能性があるデメリットは、下記のとおりです。
コストアップの可能性もある
EC物流代行業者へ物流業務を委託することで、物流にかかる費用がコストアップしてしまう可能性もあります。代行サービスの費用を事前にしっかりと確認し、効果的なコスト削減につながるか確認してから利用することが重要です。
物流業務の知識の蓄積ができない
物流業務を委託業者に任せると、自社に物流に関する知識を蓄積することができなくなります。将来的に自社で物流を検討しているなら、外部業者への委託については検討の余地があるといえるでしょう。
業者選びの難しさ
各EC物流代行業者には得意分野があり、業態や商材に合った業者選びが重要です。また、請け負える業務範囲、サービス内容もしっかりと確認しなければいけません。
また、商品や顧客情報を預けるため、信頼できる業者かどうかも大切なポイントです。物流業者の失敗が、自社のブランドや信頼の損失につながることもあります。
情報流出のリスクが生じる
EC物流業者を利用することは、ECサイトを利用する顧客の個人情報や、自社の商品情報を預けることになります。これらのデータが漏洩・改ざんされると、顧客の信頼を失い、事業に大きな損害を与える可能性があるため、セキュリティ対策を徹底している業者を選ぶことが大切です。
具体的にはデータの暗号化やアクセス制限の設定、不正アクセスの監視、データの定期的なチェック、データマネジメントの実施などを行っている業者が安心です。自社の規模やニーズに合わせて、適切なデータ管理対策を講じる必要があります。
EC物流代行業者を選ぶ際のポイント
EC物流代行業者の利用を検討する際には、押さえておきたいポイントがあります。下記を参考に、自社の物流を任せるパートナーを適切に選んでください。
対応可能な商材や業態、地域
EC物流代行業者の扱える商材や得意な業態などが、自社と合っているかを確認することが必要です。配送できる地域や、倉庫の地理的な条件なども重要でしょう。現実的に考えると、自社の商品を生産している場所や届ける場所に近いほうが便利です。
委託できる業務範囲とコスト
EC物流代行業者の提供している業務内容が、自社が求めていることと合致しているか確認してください。利用したいサービスをアレンジできるか、また予算感と料金体系が合っているかを検討します。
物流代行には定額制とカスタマイズ制があるため、自社にはどのタイプが合っているかも考慮する必要があります。
提供可能な技術やシステム
EC物流代行業者が保有する技術やシステムを確認することが必要です。例えば、在庫管理システムや追跡システムなど、自社が求めている技術やシステムを保有しているか、効率的な運用ができるかどうか、利用しやすいシステムかどうかを確認することをおすすめします。
イレギュラーへの対応の可否
EC物流代行業者が繁忙期や将来的な成長に対応できるかも大切なポイントです。需要の増減に対応できる倉庫か、繁忙期にスタッフを増員することは可能か、確認してください。
サポート体制・過去の実績や評判
EC物流代行業者からの定期的な報告やミーティングなど、コミュニケーションが可能な業者かどうかも知っておきたいポイントです。カスタマーサービスを利用する場合は、顧客からの問い合わせ、トラブル時の対応を確認しておくことをおすすめします。
また、同業他社と比較し、事例を確認して信頼できる業者かどうかを検討してください。
EC物流代行にお困りならプラス ロジスティクスグループにご相談ください
ECサイト事業者は、自社の顧客層やニーズに合わせて、適切なEC物流代行を利用することでリソースを確保することができ、売上拡大を実現することが可能です。顧客の利便性と満足度を向上させることにもつながるため、自社ブランドのファンづくりにも貢献することでしょう。
ただし、EC物流代行業者には得意分野があり、展開しているサービスもさまざまです。事前にしっかりと打ち合わせし、自社が依頼したい業務を提供し、予算感に合った業者を選んでください。
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