この記事は、 10 分で読めます。
物流倉庫のオペレーションは、現代のサプライチェーンにおいて極めて重要な役割を果たしています。商品の入荷から保管、出荷までの一連の流れを管理するこの業務は、企業の競争力向上やコスト削減に直結する重要な要素です。
この記事では、物流倉庫における主要な業務の流れをはじめ、オペレーションの効率化がもたらす具体的なメリット、さらには効率化を実現するための方法や改善ステップについて詳しく解説します。
物流倉庫のオペレーションとは倉庫内の一連の業務のこと
物流倉庫のオペレーションとは、商品の入荷から出荷に至るまで、倉庫内で行われるすべての業務プロセスのことを指します。これらの業務がスムーズに運用されることで、在庫の最適管理、納期の遵守、コストの抑制といった効果が得られ、企業全体のサプライチェーンが円滑に機能します。
物流倉庫のオペレーションの流れ
物流倉庫のオペレーションは、商品や素材など、倉庫に格納する商品が倉庫に届くところから始まります。物流倉庫における一般的なオペレーションの流れは、下記のとおりです。
入荷・入庫
入荷・入庫とは、取引先やメーカーから商品が到着した際の荷物の受け取りや、倉庫内への格納のことです。受け取った後は、荷物の数量や商品の状態をチェックし、倉庫管理システム(WMS)などを使って入庫処理を行うことが多いでしょう。
小さな商材であれば段ボール数個で入荷できますが、特に大型商材や重量物の場合、コンテナからフォークリフトなどを使って荷物を取り出すため、人手が必要です。作業の効率を上げるために、十分な人数を確保し、安全面を考慮しながら慎重に取り扱います。
入荷検品
入荷検品とは、入荷した商品が、注文書や納品書に記載された品番・数量・品質と一致しているかをチェックする作業です。この工程でミスや不良品を発見できるため、後工程への影響を防ぐ重要なステップです。
保管
保管とは、検品が完了した商品を、特性に応じた最適なロケーションへと移動され、保管することです。ロケーション管理を徹底することで、破損や汚れのリスクを軽減し、ピッキングや棚卸し作業の効率も向上します。
流通加工
流通加工には、生産加工と販促加工があります。生産加工では商品の組み立てや部品の切り分けなどを行い、販促加工ではラッピング、値札付け、検針などが行われます。これらの作業により、商品はエンドユーザー向けに整えられます。
ピッキング
ピッキングとは出荷指示にもとづいて、指定された商品を倉庫内から取り出す作業です。シングルピッキングは注文ごとに商品を取り出す方法で、トータルピッキングは複数の注文分を一括で取り出し、後から配送先別に分配する方法です。ピッキングの方法は、
出荷検品
出荷検品とは、出荷前の最終確認として、ピッキングした商品が正しいかどうかを確認する検査のことです。品番・数量・商品の状態などを再度チェックし、誤出荷やクレームのリスクを軽減します。
梱包
検品が完了した商品は、破損や汚損を防ぐために適切な梱包資材で梱包されます。商品特性に合わせた梱包方法を選ぶことが、輸送中の品質維持につながります。近年では、環境に配慮した梱包を取り入れることで、環境負荷を軽減しながら持続可能な社会の実現に寄与する取り組みが進められています。
仕分け・出荷
仕分け・出荷とは、配送先や方面ごとに商品を仕分けし、トラックなどの輸送手段に積み込み、出荷することを指します。仕分けミスを防ぐためにも、システムを活用した正確な管理が重要です。
オペレーションの効率化のメリット
物流倉庫におけるオペレーションを効率化することは、単なる作業時間の短縮にとどまらず、企業の収益性やサービス品質、さらには人材戦略にまで良い影響を与えます。効率化によって得られる主なメリットは、次のとおりです。
コストを適正化できる
倉庫内の無駄を排除し、動線や作業時間を最適化することで、保管費や荷役費、人件費などの物流コストを大幅に適正化できます。特にピッキング作業や仕分け作業の効率化は、即効性のあるコストカットにつながるでしょう。
物流品質向上
作業工程の標準化や自動化によって、人為的なミスが減少し、物流品質が向上します。また、トラブルや誤出荷のリスクを最小限に抑えることで、エンドユーザーからの信頼も高まり、顧客満足度の向上にもつながります。
人手不足への対応
オペレーションを改善すれば、少人数でも効率的に作業ができる仕組みを構築でき、深刻化する人手不足に対応できます。また、業務の属人化を防ぐことで、誰でも同じレベル感で業務を遂行できるようになります。
生産性の向上
作業時間の短縮やミスの削減によって、倉庫全体の生産性が向上します。先入れ先出しの徹底や適切なロケーション管理により、過剰在庫や欠品といった在庫管理上のロスも防げ、物流の品質向上につながります。
オペレーションを効率化する方法
物流倉庫のオペレーションを効率化するためには、システムや最適な設備の導入に加え、現場の作業フローや環境そのものを見直すことが重要です。実際に効果が期待できる方法を、下記でご紹介します。
WMS(倉庫管理システム)の導入
倉庫業務の効率化において、WMS(Warehouse Management System)の導入は非常に効果的です。在庫のリアルタイム管理、誤出荷の防止、作業の進捗可視化など、多くのメリットが考えられます。
WMSを導入すればピッキング時間を短縮でき、スムーズなピッキングの際に重要な「考えない・探さない・歩かない」といった環境が実現できます。また、請求書発行などの事務作業も自動化できるため、全体の業務効率が向上するでしょう。
マニュアルの作成
誰でも同じ手順で作業できるよう、マニュアルを作成しましょう。マニュアルがあれば、作業の均一化と品質の安定化につながります。特に、新人教育にかかるコストや時間を削減できる点も大きなメリットです。
倉庫内レイアウトの最適化
倉庫内のレイアウトを見直すことで、作業効率を高められます。作業動線を短縮し、ピッキング頻度の高い商品を取り出しやすい位置に配置することで、無駄な動きが減り、作業時間を削減できます。動線の確保は、作業スタッフの安全にもつながるでしょう。
マテハン機器の導入
商材や倉庫に合った最適なマテハン機器の導入により、荷役や仕分け作業の自動化・省力化が可能になります。フォークリフト、コンベヤ、自動搬送ロボット(AGV)などを活用することで、作業スピードと安全性が飛躍的に向上するでしょう。
倉庫内オペレーションを改善するステップ
物流倉庫のオペレーションを効率化する際は、性急に改革を進めるのではなく、段階的にステップを踏み、改革することが大切です。効果的なオペレーション改善のための7つのステップを見ていきましょう。
1. 現状把握と問題点の特定
まずは、現在の倉庫内オペレーションを詳細に分析します。作業フロー、作業時間、人員配置、在庫の動きなどを可視化し、非効率な部分やムダを明らかにすることから始めます。
2. 改善計画の策定
特定された問題点に対して、実行可能な改善計画を策定します。改善の優先順位を決め、どの部分から手を付けるか明確にすれば、現場の混乱を防ぎ、スムーズな導入が可能になるでしょう。
3. 5S活動の実施
倉庫内の作業環境を整える基本として、「5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」の徹底も重要です。作業効率が上がるだけでなく、安全性の向上や従業員の意識改革にもつながります。
■5S活動
4. 倉庫レイアウトの最適化
倉庫レイアウトを最適化するために、商品の回転率や作業頻度に応じたゾーニングを行い、効率的なレイアウトへと再構築します。動線を短縮し、作業員の移動を減らせば、大幅な時間短縮と作業負荷の軽減が可能になります。
5. システム化の推進
WMS(倉庫管理システム)やハンディーターミナルなどを活用し、在庫管理や作業指示の自動化を図ります。情報の一元管理により、ミスの削減と業務のスピードアップが実現するでしょう。
6. 作業のマニュアル化と教育
標準化された作業手順書を作成し、全従業員に教育すれば、業務品質の均一化が図れます。また、教育体制を整えると、新人の即戦力化や属人化の解消にもつながります。特に新しくマテハンやハンディーターミナルを導入する際には丁寧に伝達し、導入時の混乱を防ぎましょう。
7. 効果測定とフィードバック
改善策を導入した後は、定期的に効果測定し、より良い改善を繰り返すことが大切です。業務効率やエラー率、作業時間などの数値をもとに、必要に応じて改善計画を見直せば、継続的な業務改善が可能になります。
【事例】プラス ロジスティクスが手掛ける倉庫内オペレーション改善事例
物流専門企業のプラス ロジスティクスは、荷主企業の倉庫運営を受託し、常にオペレーションの改善に取り組み、物流品質の向上につなげています。ここでは、計測・産業機器を扱う専門商社株式会社NaITO様(以下、NaITO様)の事例をご紹介します。
NaITO様は、従来は東京都内の本社ビルの一部フロアを物流センターとして運用されていました。保管スペース不足や、多層階による非効率な動線、夕刻の出荷作業の集中、在庫管理が煩雑といった課題を抱えていらっしゃいました。
建物の老朽化にともなって物流機能の移転を検討されている際に、物流業務全体をプラス ロジスティクスが受託。新規営業所兼物流センターのレイアウト企画から、マテハンの選定、オペレーションの改善についてプラス ロジスティクスが提案し、実装いたしました。物流センターの庫内オペレーションを改善し、特に大きな変化が見られた項目は次のとおりです。
最新設備と柔軟な保管で格納率250%向上
新センターのレイアウトから企画提案し、物流のあり方を抜本的に改革しました。特に、NaITO様が扱う商材は多岐にわたり、細かな部材が多いため、入荷とピッキングをスムーズにするために取り違いが起きないように、適した自動収納庫やマテハンを選定しました。
1基あたり最大6,500アイテムを収納できる自動収納庫「Kardex Shuttle」は、格納効率の向上に貢献し、従来比で250%アップを達成。また、固定ロケーションからの脱却を提案し、フリーロケーションを導入してより柔軟な在庫運用が可能となりました。
搬送・WMS連携で現場がスムーズに
煩雑だった人と商品の流れを整理し、バーチレーターや垂直搬送機、ローラーコンベヤを組み合わせた動線を設計し、作業負荷の軽減に成功しました。
さらにWMSとハンディーターミナルのシステムをNaITO様の実態に合わせてカスタマイズで開発。入出荷処理やピッキングの精度の向上に貢献したほか、間違いが生じない入庫やピッキングが実現し、作業の平準化も実現しています。
荷合わせと人的リソースの課題も解決へ
NaITO様では顧客サービスとして、注文が分かれたとしても夕方の便に間に合う限り、当日出荷を実施されています。しかし、そのためには毎日、出荷時刻である夕方には、別作業の担当者数名の協力を得ながら荷合わせや出荷業務に従事しなくてはならず、業務負担につながっていました。このオペレーションを見直し、まずは同日内発注が多い顧客を抽出。あらかじめその日の荷合わせを予測して対象となる物量を減らし、スムーズな出荷作業が可能となりました。人的リソースの課題解決にも効果を発揮し、物流品質の向上にもつながっています。
この事例について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
倉庫内オペレーションを改善したい荷主企業様はプラス ロジスティクスにご相談ください
物流倉庫のオペレーションは、一部分だけの改善では根本的な解決にはつながりません。物流全体の作業フローや業務体制を見直し、最適な仕組みを構築することで、初めて本質的な効率化や品質向上が実現します。
プラス ロジスティクスでは、多品種小ロット対応や複雑なオペレーションに強みを持ち、WMSのカスタマイズやマテハン機器の導入を含めた総合的な改善提案が可能です。倉庫の移転やリニューアルを機に、物流業務の課題を根本から見直してみませんか?プロの視点で、貴社に最適な改善策をご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。