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自動倉庫とは、これまで人の手で行ってきた倉庫内業務をロボットが代わりに行う、システム化された倉庫です。例えば、商品の入出庫や在庫管理、ピッキング、運搬作業などを、人の代わりにロボットが実施するのです。コンピューターで倉庫内業務を一元管理することができるので、業務のミスをなくし、効率化するとともに、倉庫で働くスタッフの負担を軽減することができます。
この記事では、自動倉庫の種類や、導入するメリット・デメリットなどについて解説します。
自動倉庫とはピッキングや運搬作業をロボットが行いシステム的に管理する倉庫のこと
自動倉庫とは、これまで人が行ってきた倉庫内作業をロボットが担う倉庫のことです。自動搬送や倉庫管理システムを駆使して運営される自動倉庫は、業務効率化や人材不足解消の切り札として注目を集めています。
従来の倉庫では、人が倉庫内を歩いて移動しながらピッキングするPTG(Person To Goods)により行われていました。自動倉庫では、システムによって必要な商品が自動的に人のもとへ移動してくるGTP(Goods To Person)が実現。生産性や安全性が向上し、作業者の負担軽減にもつながります。
また、ロボットなどが荷物を運搬する自動倉庫では、人の手では難しい高所への商品の保管が可能です。天井空間を有効利用できることから、倉庫の格納効率もアップ。また、いつ、どこに、何があるのかがシステム的に管理できるため、倉庫のシステム化は、商品のトレーサビリティ(追跡情報)の管理という面でも役立ちます。
自動倉庫の種類
自動倉庫にはさまざまな種類があり、それぞれ機能が異なります。導入を検討する際には、自社のニーズに合った倉庫を選びましょう。ここでは、9種類の自動倉庫の特徴をご紹介します。
バケット自動倉庫
バケット自動倉庫は、小型バケットに不定形の商品や小型の商品などを詰めて、立体式の倉庫にずらりと並べて保管する形式の倉庫です。バケットの移動はクレーンによって自動化されており、ピッキングも簡単に行うことができます。
プラス ロジスティクスでは、ジョインテックス西日本センターで導入しています。
パレット自動倉庫
パレット自動倉庫は、パレット単位で製品や部品を保管する自動倉庫です。パレットに荷物を積み込んで自動で運搬することができるため、大型の商品や重量のある商品の保管にも適し、縦の空間を活かして保管できます。建築一体型のビル式ラックはもちろん、既存の倉庫に設置することも可能です。
プラス ロジスティクスでは、ジョインテックス西日本センターおよび、関東物流センターに導入されています。
フリーサイズ自動倉庫
フリーサイズ自動倉庫は、コンテナや段ボール、トレイなど、さまざまな形状、サイズ、重量に対応できる自動倉庫です。商品の形やサイズ、重さに関わりなく商品を自動で運搬、収納できます。
移動棚(ムービンラック)型自動倉庫
移動棚(ムービンラック)型自動倉庫は、商品を載せた棚そのものを移動台車に載せて保管する倉庫です。移動台車は電動制御されており、大型の棚でも簡単に移動させることができます。
「保管時は棚を密集させておいて、作業時のみ必要な場所に通路を作る」といった使い方をすれば、倉庫内のスペースを最大限有効活用できるのが特徴です。
プラス ロジスティクスでは、ユアサ商事株式会社と株式会社Phoxterの3社でピッキング用の自動搬送システム『ツインピック』を開発し、運営を受託中の「ユアサ商事 関東物流センター」に導入しました。当システムは「高層棚コンテナ自動搬送ロボット」と「低層棚自動搬送ロボット」2種類のロボットを同時制御するもので、国内初事例、実用新案を取得しています。なお、実際に稼働している様子を見学いただくことも可能です。
ユアサ商事 関東物流センターに導入中の自動搬送システム『ツインピック』高層棚コンテナ自動搬送ロボット
ユアサ商事 関東物流センターに導入中の自動搬送システム『ツインピック』低層棚自動搬送ロボット
▼『ツインピック』動画はこちらからご覧ください▼
プレスリリース │ プラス ロジスティクス、ユニークで革新的なピッキング用自動搬送システムを開発 物流センター運営を受託中の「ユアサ商事 関東物流センター」に導入
縦型式回転棚
縦型式回転棚は、高さのあるラックに商品を保管し、内部でラック全体を回転させて出入庫を効率化するシステムです。
縦型式回転棚には取り出し口が設けられていて、必要な商品はそこから取り出します。内部で棚全体が回転するので、危険がないよう、取り出し時以外はシャッターや扉が閉まるようになっています。天井までの空間を有効活用し、より多くの商品を保管できます。
縦型リフト式自動倉庫
縦型リフト式自動倉庫は、前述の縦型式回転棚に類似した形状の自動倉庫です。天井までの空間を活かした超高密度収納により、倉庫の保管効率を高めます。しかしながら縦型式回転棚とは異なり、棚全体が回転するのではなく必要な棚のみをリフターが搬送するため、より高速なピッキング作業が可能となります。
プラス ロジスティクスでは太田センターで導入しており、通常のラック保管と比較して保管効率を約250%改善しています。
プラス ロジスティクス、株式会社NaITO の東日本エリアの物流機能を受託 ~省人化を実現した自動化倉庫「太田センター」の稼働を開始~
冷蔵・冷凍対応自動倉庫
冷蔵・冷凍対応自動倉庫とは、冷蔵品や冷凍品を収めることができる自動倉庫のことです。従来の冷蔵・冷凍倉庫では、スタッフがピッキングなどの作業をできる時間は限られています。倉庫内作業を自動化した冷蔵・冷凍倉庫なら、業務効率の向上とスタッフの負担軽減につながります。
冷蔵・冷凍品をシステム管理でスピーディーに処理していくことは、品質と鮮度の維持にも役立つでしょう。
シャトル式自動倉庫
シャトル式自動倉庫は、前後左右に動くシャトル台車を活用した自動倉庫です。ラックに設置されたシャトル台車に荷物を載せたパレットを置くと、自動的に搬送場所までシャトル台車が移動し、荷物を格納します。リフトを使うことで、垂直方向と水平方向、どちらの動きにも対応できるようにしたシャトル式自動倉庫もあります。
自動化によって作業効率を上げられるほか、高所への保管が可能になるため、保管効率も上がります。荷物は自動制御されたシャトル台車が運びますから、荷物同士の衝突といった事故を減らすことも可能です。
オートストア
オートストアは、格子状のグリッド(支柱・レール)の中に、ピンと呼ばれる専用コンテナを隙間なく格納したシステムです。オートストアへの荷物の出し入れは、内部を縦横に動くロボットが行います。
必要なピンをロボットが探し出して作業者のもとへと運ぶので、人が倉庫内を移動する必要がありません。作業者は、腰の高さに自動で運ばれてきた荷物を、かがむ動作なくピッキングすることが可能であり、作業負担を大幅に軽減できます。
また、再入庫した商品は上段に積まれていきますから、自然と出入りの激しい商品が上部に集まり、作業効率を高めます。
プラス ロジスティクスでは、ジョインテックス東日本センターに導入されています。
自動倉庫で自動化されている業務
自動倉庫では、ロボットやシステムがさまざまな作業を自動で行います。自動化される主な倉庫内業務は、下記のとおりです。
在庫管理
在庫管理とは、入出庫や在庫を管理する業務のことです。自動倉庫では、システム的に自動で管理することができます。商品に貼付されたバーコードなどを読み取って管理することで、リアルタイムにいつどこに何があるのかを把握することができます。
ピッキング
ピッキングとは、棚に収納された荷物を出荷指示に従って探し出す業務のことです。自動でピッキングするシステムは下記の2種類に大別できます。
<自動ピッキングシステムの種類>
- ピッキング業務をすべてロボットが行う
- 人がいる所まで棚が移動してくるなど、人力でのピッキングを補助する
ピッキングを自動化することで、倉庫内スタッフの負担を大きく減らすとともに、正確なピッキングが可能になります。
運搬
運搬とは、倉庫内で荷物を運ぶことを指します。自動倉庫では、無人フォークリフトや運搬ロボットによる自動運搬が可能です。重い荷物を簡単に移動できるほか、重い荷物を運搬中に落としてスタッフがケガをするといった事故も防げます。
移動ルートをシステム的に制御することで、商品をラックにぶつけて破損したり、商品同士がぶつかったりするリスクも低減できるでしょう。
自動倉庫を導入するメリット
自動倉庫には、生産性の向上や物流品質の安定といった多くのメリットがあります。自動倉庫を活用することで得られる主なメリットをご紹介します。
生産性・作業効率の向上
自動倉庫では、主にロボットが倉庫内作業を行います。人が作業するわけではありませんから、メンテナンス時以外は、24時間稼働が可能です。長時間稼働しても、人のような疲労による生産性の低下やミスの増加は起こりません。常に一定の速度と品質で業務を続けられるため、生産性の向上に大きく寄与します。
同時に、倉庫で働く従業員の負担軽減にも役立ちます。危険な作業や体力が必要な作業を自動化し、システムの管理や自動化できない部分を人が担うことで、安全で効率の良い倉庫業務を行うことが可能になるのです。これは人件費の削減にもつながります。
倉庫スペースの有効活用
自動化によって、従来の倉庫では荷物を積めなかった天井近くの高所にも、荷物を格納できるようになります。また、人が通行することがなくなるため、通路を確保する必要もなくなります。これまでと同じ倉庫面積に、より多くの商品を効率良く保管できることは大きなメリットといえるでしょう。
人的ミスの削減
倉庫内業務をシステム制御することによって、商品の落下による破損やピッキングのミス、保管場所の間違いといった人的ミスがなくなります。
人的ミスをゼロにすることは不可能です。ロボットやシステムによる作業でトラブルがなくなる分、業務効率が上がり間違いが減れば、顧客満足度向上にもつながるでしょう。
品質の安定化
これまで人力で行っていた商品の運搬や管理を自動化できるため、物流の品質を安定的に向上させる効果が期待できます。
例えば、バーコードで商品を管理すれば、いつ、どこに商品があるのかが明確になります。顧客からの「注文した商品の処理状況を確認したい」といったニーズにも、即時応えることが可能です。そのほか、効率化によるリードタイムの適正化、倉庫内の事故の防止などにもつながります。
自動倉庫を導入するデメリット
多くのメリットを持つ自動倉庫ですが、導入には課題も少なくありません。自動倉庫を導入する際に知っておきたいデメリットは下記のとおりです。
導入コストが高額
自動倉庫を導入する際には、高額な初期コストがかかります。どのような機能を持たせるか、また倉庫の規模によって具体的な費用は異なりますが、いずれにせよ小規模な事業者が自社で導入するのは難しいといえそうです。
保管方法に適合する荷主に固定
自動倉庫には、さまざまな種類があります。扱う商品の特性と倉庫の特性がマッチしないと、利用できない可能性があるでしょう。また、利用できたとしても、期待したほどの効果が得られない可能性もあります。
自動倉庫を導入する際は、導入後の利用シーンをシミュレーションするなどして、自社に適しているかどうかを判断しなければいけません。
在庫量の変動に対応できるシステムが必須
季節によって在庫量やニーズが変化する商材を取り扱っている場合は、変化に対応できるシステムを備えた自動倉庫を導入することが必要です。
機能が増えればそれだけ導入コストやランニングコストも高額になっていくため、費用対効果が見合うかどうか慎重に検討してください。
機械トラブル・システム障害に対応できる体制
すべてをシステム制御する自動倉庫は、システムトラブルが起こった際のリスクが高いという難点があります。
機械を利用する上で、トラブルやシステム障害は避けて通れないものです。対応できる人材や体制を整え、トラブルが生じた際にできるだけ早く復旧できるようにしておかなければいけません。
自動倉庫を導入・選ぶ際のポイント
自動倉庫を導入する際には、費用対効果について検討する必要があります。自動倉庫は導入後に多くのメリットを得られますが、その分、前述のとおり初期費用とランニングコストがかさみます。倉庫内作業において解決したい課題とコストを比較して、プラスの効果が得られるかどうかを検討してください。
自動倉庫を活用した物流倉庫の業務改善事例
ここからは、プラス ロジスティクスが行った倉庫自動化により、物流業務の効率化や省人化に成功した企業様の事例をご紹介します。
プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー様(以下、ジョインテックス)の物流拠点のひとつ「ジョインテックス東日本センター」は、他場所で稼働していた東京センターの統合により出荷量が増加し、運営に支障が生じるようになっていました。施設の老朽化もあり、建て替えも含めた大幅なリニューアルを実施することとなりました。
そこで、プラス ロジスティクスが庫内設計やマテハンの提案を行い、費用対効果の測定と検討を経て、倉庫内の自動化を推進。大規模な自動倉庫では不可欠なWMS(倉庫管理システム)の開発やWCS(倉庫制御システム)の活用も行っています。
リニューアル前の課題のひとつに、受注の締切時間がありました。ジョインテックスの業務では、届け先が同一の受注が複数発生しますが、その都度発送を行っていると、1梱包あたりの物量が少量になってしまいます。そのため、一定容量になるまでは受注を留め置くルールがありますが、締め時間近くに一斉に処理すると作業量が膨大となり、当日出荷に間に合わせることが困難になっていました。
課題解決のためには、まず受注の留め置きルールを自動化する必要がありました。これにはロータリーソーターを活用して商品を一時保管するシステムを導入。追加受注が発生した場合、ソーターが対応し、最終的には効率的なピッキングと梱包が行われます。これにより、出荷業務の効率化と複数オーダーのまとめ発送が可能となりました。
プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー様の取り組みについて、詳しくはこちらをご確認ください。
自動倉庫導入を検討するならプラス ロジスティクスにご相談を
自動倉庫は物流品質を向上させ、効率化にも寄与するなど多くのメリットがあります。しかし、その反面、初期費用やランニングコストは高額で、多くの設備投資が必要です。自動倉庫の導入によって得られる人件費の削減効果や生産性の向上による効果など、さまざまな面から削減できるコストを精査し、導入メリットがあるかどうかを検討しましょう。
自動倉庫導入にかかるコストや、削減できるコストの算出は簡単なことではありません。自動倉庫の導入を検討中の事業者の方や、物流課題の解決に悩んでいる方は、物流専門企業のプラス ロジスティクスグループまでお気軽にご相談ください。お客様に最適な物流の在り方をご提案します。
自動倉庫に関するよくある質問
- Q1_自動倉庫とは?
- 自動倉庫とは、これまで人の手で行ってきた倉庫内業務をロボットが代わりに行う、システム化された倉庫のことです。例えば、商品の入出庫や在庫管理、ピッキング、運搬作業などを、人の代わりにロボットが実施します。コンピューターで倉庫内業務を一元管理することで業務のミスをなくし効率化するとともに、倉庫スタッフの負担を軽減することができます。
- Q2_自動倉庫を導入するデメリットは?
- 自動倉庫を導入するデメリットには、高額な導入コストかかったり、保管する商品と倉庫の特性がマッチしないと期待した効果が得られないなどがあります。また季節ごとの在庫量の変動に対応するシステム導入が必要になったり、機械トラブルに対応できる体制づくりが必要になります。
- Q3_自動倉庫の種類は?
- 自動倉庫には保管方法や自動化されている箇所によりさまざまな種類があり、それぞれ機能が異なります。例えば縦型式回転棚は、高さのあるラックに商品を保管し、内部でラック全体を回転させて出入庫を効率化するシステムです。内部で棚全体が回転するので、危険がないよう、取り出し時以外はシャッターや扉が閉まるようになっています。天井までの空間を有効活用し、より多くの商品を保管できます。