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近年、物流需要が高まる一方、人手不足や資源の高騰によるコストの上昇に悩む事業者も少なくありません。物流の現場では、物流品質を保ちつつ、コストカットをしていくことが求められています。
しかし、本来であれば、コストの削減ではなく、適正化を図ることが大切です。むやみにコストカットを重視した施策を取るのではなく、無駄をなくすことで適正コストの実現を目指しましょう。
本記事では、物流工程ごとのコストやコストが上昇する理由、コストを適正化するための方法について詳しく解説します。
物流コストとは物の移動に必要となる費用のこと
物流コストとは、物流業務において、材料や商品といった物を移動させるために生じる費用です。
例えば、トラックで材料や商品を配送する際のガソリン代、トラックドライバーの人件費のほか、商品を倉庫に保管する際の費用なども物流コストに含まれています。
物流コストの削減や適正化を考える際は、どのような工程で、どのくらいのコストがかかっているのかを把握しなければなりません。まずは、物流工程の種類と、物流コストにおいて各工程が占める割合を知っておきましょう。
物流コストは5つの工程に分けて考える
物流工程は、機能別に5つに分けられます。物流コストを考える際も、工程ごとのコストを算出し、適正かどうか検討する必要があるでしょう。物流工程別にかかるコストは、以下のとおりです。
輸送費
輸送費は、荷物を配送する際の輸送料全般を指します。配送業者に荷物の配送を依頼している場合は配送料金が該当しますが、自社でトラックを運用しているのであれば、ガソリン代やトラックの維持費、減価償却費などが該当します。
輸送費を決める要因は、主に、「運ぶ物のサイズや重量」「運ぶ距離」「運ぶ時間」です。つまり、大きいサイズや重い重量を運んだり、長い距離を運んだりするほか、早く運ぶような場合には、輸送費が高くなります。
例えば、一般的に、航空便は船便に比べてものを早く運べるため、同じものを同じ距離運ぶのであれば、輸送費は航空便のほうが高くなります。
荷役費
荷役費とは、倉庫や物流センターへの商品の入荷、または、出荷にかかる費用です。
具体的には、トラックなどで運ばれてきた商品を荷下ろしして倉庫に入庫する費用や、出荷指示に従って商品をピッキング・梱包・仕分けする費用、商品を出庫するためにトラックに積み込む費用などが該当します。コンテナの場合は、荷物を積み込むことをバンニング、反対に取り出すことをデバンニングと呼びます。
荷役には人手が多く必要になるため、作業の効率化がコスト削減のカギを握るといえるでしょう。
保管費
保管費は、商品を倉庫内で保管、管理するときに生じる費用をいいます。一般的には、自社倉庫の場合は賃料や光熱費が保管費に該当し、外部倉庫を利用する場合は保管費用などが該当することが多いようです。
包装費
包装費は、商品を梱包する際にかかる段ボールや袋、シール、タグなどの資材費のほか、人件費も含みます。作業には商品に合わせた対応が必要で、手間がかかるため人件費もかさみます。
物流管理費
物流管理費とは、物流全体を管理するために必要なシステムの導入コストや運用コスト、また、管理する人員のための人件費のことです。物流システムは導入時にコストがかかりますが、物流の効率化や品質の向上を期待できます。
物流コストは業種により工程ごとの比率が異なる
物流コストは業種によって構成比が異なります。物流コストの機能別構成比は以下のグラフのとおりです。どの業界も輸送費が最も割合が多いという点は同じですが、各コストの比率は大きく異なることがわかります。
■物流コストの機能別構成比
出典:公益社団法人日本ロジスティクス システム協会「2022 年度 物流コスト調査報告書【概要版】」
このグラフを参考に、自社の物流コストの構成比と比較してみましょう。コストがかかり過ぎている工程があれば、適正化できる可能性があります。
物流コストが上昇する理由
近年、物流コストは上昇傾向が続いています。物流コストが上昇する理由を知ることで、コストの適正化に役立てましょう。
物流の需要が増加し、供給が不足している
個人顧客のEC利用の増加に伴い、宅配便需要の急激な増加が物流コストの上昇理由として挙げられます。物流件数は、1990年に1万3,656件であったのに対し、2021年には2万5,080件と2倍近くに膨れ上がっています。物流の小口化と多頻度化が急速に進行しており、物流需要が高まっているといえるでしょう。需要が急激に膨れ上がって供給が不足すれば、その分コストは上昇します。
さらに、ガソリンの価格も1996年の67.78円から2022年には120.99円に値上がりし、現在も上昇傾向が続いています。近年の燃料価格の高騰も、物流コストの一因といえるでしょう。
働き手が不足している
物流業界は、ドライバーや倉庫スタッフなどの働き手が不足していることも、物流コストが上昇する理由の1つです。ドライバーについては、労働時間の規制などによる2024年問題や平均年齢の上昇といった課題もあり、物流需要の増加に対応するのが困難な状況だといえるでしょう。
国土交通省は、2024年問題に対して具体的な対応を行わなかった場合、2030年には約34%の輸送能力が不足する可能性があると指摘しています。人手不足の物流業界で働き手を確保するためには、相応のコストを支払う必要があるといえます。
自社の物流課題を把握できていない
自社の物流課題を把握できていないことも、物流コストの上昇を招く理由です。
サプライチェーンが複雑化する中、いつ、どの工程で、どのくらいコストがかかっているのかが見えにくくなっているケースもあります。コストが増加する原因となっている工程を把握できなければ、コストの適正化やカットもできません。各工程におけるコストの把握と、カットできる部分の検討が必要だといえるでしょう。
一方で、顧客の要求が多様化していることもあり、コストがかさむ部分が見えていても適正化する方法が見つけられない、といった問題が生じている場合もあります。
物流コストを適正化する方法
物流コストを適正化する方法はひとつではありません。さまざまな方法の中から、自社の取扱商材や顧客のニーズに合致する方法を見つけ、実践していきましょう。一概にコストをカットしようとするのではなく、エンドユーザーが何を求めてどこまでを許容できるのかを踏まえて、満足度が最大化する物流のバランスを実現することが大切です。
倉庫や物流拠点を見直し、最適化する
物流コストを最適化する方法として、倉庫や物流拠点の位置や規模を見直し、無駄をなくしてコストを適正化することが挙げられます。荷物がどこから来てどこに運ぶのかを踏まえた上での、最適な倉庫を設置する位置と数の検討が必要です。
例えば、小規模な倉庫を複数構えると柔軟性の高い運用をしやすくなりますが、その分倉庫の管理費用や人件費はかさみます。倉庫の分散と集約はどちらにもメリットがあり、一概にどちらが良いとはいえません。自社の取扱商材や顧客の状況に合わせて、適正な数と位置を検討するようにしてください。
また、倉庫の立地と人員確保のバランスをとることも大切です。人の少ない地価の安い土地に倉庫を構えれば土地代が安く済みますが、住む人が少なければスタッフの獲得に難儀することになりかねません。
最適な倉庫の在り方は企業によって異なります。自社で検討するのが難しい場合は、物流専門企業に相談するようにしましょう。
価格や単価を交渉する
配送料などの単価が実情と見合っていない場合に、取引先や顧客に対し価格交渉を行うことも、物流コストを最適化する方法といえます。
国土交通省では、荷主などに対して、燃料費の運賃への適正な転嫁や、荷待ち時間への対価についての提言を行っています。無理に運賃を下げたり、過剰な請求をしたりするのではなく、実情に見合った適正な運賃を実現することが大切です。
とはいえ、取引先や顧客に負担がかかる提案を了承してもらうのは簡単なことではありません。取引先に対してもメリットにつながる提案を心掛けましょう。単価を見直す一方で最終的な支払額が上がらないよう配送効率化につながる施策をとる、一定以上の数量を超える依頼に対して割引制度を設ける、といった方法が考えられます。
積載率など輸配送を改善する
積載量といった輸送量の改善も、物流コストの最適化には欠かせない方法です。
トラック1台あたりの積載量や積載率を上げれば、配送効率も上げられる可能性があります。ドライバー1人、トラック1台で運べる荷物の量を増やして効率化すると、物流コスト削減に大いに貢献できるでしょう。
積載率を上げるための具体的な施策としては、以下のような方法が考えられます。
- 注文の都度出荷するのではなく、複数をまとめて出荷する
- パレットの有効活用など、トラックへの積み込み方法を見直す
- トラックのルートを見直して、効率良いルートで荷物を配送できるようにする
- 配送ネットワークを構築し、共同配送を行う
また、トラックの荷待ち時間を削減するのも、人件費の削減やトラックの運用に役立ちます。トラック予約受付システムの活用や、ラックごとトラックに荷物を積み込める設備の導入などを検討しましょう。
業務を見える化し、効率化する
物流コストを最適化するには、業務を見える化し、効率化することも挙げられます。
業務の可視化には、倉庫管理システムや配送管理システム、在庫管理システムなどのシステム導入が役立つでしょう。
業務を見える化し、今、どこで何が起こっているのを確認できる体制づくりを行うことが重要です。これにより、連携をうまく取れていない業務の無駄を解消し、スムーズな運用が可能になります。併せて、自社の物流における課題も見えてくるはずです。効果的なコストの削減ポイントを見つけて、適正化を図ることが大切です。
また、自動倉庫やロボットの導入による人件費削減も効果的です。ピッキングや倉庫内の商品の搬送、梱包といった手間のかかる業務を自動化すれば、人件費の削減と業務効率化、品質向上につながります。
3PLを活用する
3PL(サードパーティー・ロジスティクス)を活用することもコストを最適化する方法の1つです。3PLとは、荷主の物流業務を外部の専門業者に包括的に委託することをいいます。
物流業務で3PLを利用すると、専門的な視点での物流改善が可能になります。物流業務の効率化に関して、3PLは豊富なノウハウやネットワークを持っているため、自社だけでは改善が難しい課題にも効果的なアプローチができるでしょう。
物流のアウトソーシングにはコストがかかりますが、物流コストの無駄をなくして効率化するという方法から、長期的な目線でコスト削減につなげることができます。また、本来の業務にリソースを割けるようになれば、売上の向上も目指せるはずです。
特に、配送手段や保管方法が限定されないノンアセットの3PLでは、幅広い選択肢の中から公平な視点で物流拠点や物流網の提案が可能です。3PLの活用で、物流コストと品質のバランスをとった、最適化を実現してください。
物流はアウトソーシング活用で適正化でき、物流品質が向上する
物流業界では、現状のサービスレベルを維持したまま、コストを削減することが求められています。しかし、すべてのサービスを維持したままコストカットを行うのは、現実的ではありません。サービスレベルとコストのバランスをとりながら、物流コストの適正化を行いましょう。そのためには、物流に関する豊富な知識とノウハウを持ったアウトソーシングサービスの活用が役立ちます。
プラス ロジスティクスでは、物流品質の向上とコストの適正化につながるご提案を行っています。物流課題の解消やコストの適正化にお悩みのお客様は、どのようなことでもお気軽にご相談ください。お客様のお悩みに寄り添い、物流の最適化を実現します。