この記事は、 12 分で読めます。
出荷業務では、多岐にわたる膨大な業務を、短時間で正確に行わなければいけません。効率化を行う際も、業務に支障をきたさないよう、慎重に進める必要があります。効率を重視しすぎることでミスが頻発するようになると、かえって手間がかかってしまうでしょう。
本記事では、出荷業務において起こりがちなミスの原因とともに、出荷業務を効率化するためのコツを解説します。出荷業務を無理なく効率化するために、ぜひお役立てください。
出荷とは受注してから発送するまでの倉庫内作業のこと
出荷とは、商品を受注してから発送するまでに、倉庫内で行われる業務全般を指します。出荷は幅広い業務が該当するため、効率化を検討する際は、工程ごとに作業の進め方を確認して無駄を洗い出しましょう。また、各工程における業務がスムーズに進んでいるかどうかも確認する必要があります。
出荷作業に含まれる具体的な業務は、以下のとおりです。
■出荷業務にあたる一連の作業
- 受注:商品の注文を受ける
- 出荷指示:受注をもとに、倉庫内で働くスタッフに出荷を指示する
- 在庫引き当て:出荷指示をもとに、倉庫内に在庫があるかどうかを確認し、商品を確保する
- ピッキング:出荷指示に従い、倉庫から実際の商品を取り出して集める
- 検品:ピッキングした商品と出荷指示が合っているかを照合し、商品の状態や数量などに問題がないかどうかも併せて確認する
- 梱包:商品をサイズに合った発送用の段ボールや緩衝材などで梱包し、輸送用の伝票を貼る
- 仕分け:梱包済みの荷物を配送する会社やエリアなどに応じて分類する
- 発送:仕分けが完了した梱包済みの荷物をトラックに積み込み、配送する
出荷業務についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
出荷業務で起こりがちなミス
出荷業務でミスが起きてしまうと、誤配送や情報漏洩など、顧客満足度や企業の信頼に関わる大きな問題につながりかねません。まずは、どのような原因により、出荷業務でミスが起こりうるのかを知っておきましょう。
ヒューマンエラー
出荷作業で起こりがちなミスの1つに、があります。ピッキングや検品、梱包、出荷といった出荷業務では、人間の手や目に頼る作業が多くなりがちです。しかし、人間が行う作業はミスが起こりやすく、誤出荷などの原因になります。現場で生じがちなヒューマンエラーは、次のようなものが挙げられます。
■出荷作業で生じがちなヒューマンエラー
エラーの種類 | 詳細 |
---|---|
誤ピッキング・検品ミス | 商品違いや数量の数え間違い |
梱包ミス | 異なるお客さま分の商品同梱、送り状の貼り間違い |
仕分けミス | 配送業者の間違い、方面仕分けの間違い |
入荷作業時のミスの見過ごし | 入荷検品時の商品違いや数量の数え間違いの見過ごし |
どれだけ気をつけていても、ヒューマンエラーをゼロにすることはできません。そのようなミスをなくすためには、自動システムの導入やミスを検知できるチェック機能の構築といった、人的リソースのみに頼らない運用を行うための施策が重要です。
ピッキング作業におけるヒューマンエラーを削減する方法としては、ピッキングシステムの導入がおすすめです。ユアサ商事様とプラス ロジスティクスが開発・導入した、「ツインピック」というピッキング自動搬入システムを実際の現場で利用したところ、自動化エリアにおけるピッキングミスを0件に削減できたという事例もあります(2023年12月度実績)。
\実際に稼働している様子を見学できます!/
データの取り間違え
受注や出荷指示などの出荷業務でシステムを活用している場合、正しい使い方をしていればデータ処理は自動で行われるため、単純な計算間違いや指示間違いなどは生じません。しかし、手入力によるデータの誤入力や、マニュアルに沿わないことが原因による誤作動が起きたりするといった事象は、ヒューマンエラーといえるでしょう。
ヒューマンエラーが原因のデータの取り間違えを防ぐためには、各工程において適切にデータ処理し、システムの使い方を徹底しなければなりません。倉庫管理システムの導入や業務フローの見直しを行うことで、情報の転記や伝達のミスを防ぎ、ステータスを随時確認できる体制を取りましょう。
誤った指示や反映漏れ
出荷作業で起こりがちなミスには、誤った指示や反映漏れも挙げられます。
出荷業務の中には受注内容に応じた出荷指示と在庫数への反映なども含まれますが、こうした業務が適切に行われていないと、在庫が過不足となってしまい、収益の悪化につながりかねません。
例えば、実際に倉庫にある在庫数とデータ上の在庫数が合致していないと過剰在庫が生じ、キャッシュフローが悪化したり、保管コストが増大したりしてしまうおそれがあります。また、データ上は在庫があるとされているのにもかかわらず、実際には欠品状態であった場合には、顧客満足度の低下や販売機会の逸失による収益の悪化を招いてしまうでしょう。
そのようなことを防ぐためには、在庫数をリアルタイムで把握するとともに、売上実績にもとづく過不足のない在庫をキープすることが大切です。
出荷業務を改善するための手順
出荷業務を改善するためには、効果的な手順があります。以下のような流れで進めていきましょう。
1.各工程の現状を把握し、課題を洗い出す
まず、出荷業務における、工程ごとの現状を把握します。かかる時間や人員数、ミスの発生率などから、スムーズに作業できていない工程がないかをチェックしてみてください。
ボトルネックとなっている工程が見つかったら、その工程で何が課題なのかを確認しましょう。携わる責任者やスタッフにヒアリングを行い、現場目線で課題を認識することが大切です。
2.解決につながる施策を取り入れ、実行する
各工程で把握した課題をもとに、解決するための施策の導入を検討します。ただし、現場の混乱を招かないよう、一度に複数の施策を実行せず、段階的に取り入れていくようにしましょう。
施策を実行するにあたり、難易度や実行後に見込まれる効果をもとに優先順位を定めてください。その際に、課題や改善策が明確であったり、高い効果が見込まれたりするものから実行していくことをおすすめします。
3.結果を評価し、仕組み化を進める
改善するための施策を導入した後は、効果測定が欠かせません。効果測定のための評価基準を明確にし、どの程度課題が改善できたのかを検証します。評価基準は、出荷数や作業時間、費用対効果など、数字で判定できるようにすると効果を把握しやすくなるはずです。
一定の効果が見込まれた場合は、改善策を仕組み化して本格的に導入しましょう。反対に、期待ほど効果を見込めなかった場合には、原因を追究して更なる改善策を検討します。施策を導入して終わりにするのではなく、PDCAを回して確実に改善につなげていくことが重要です。
また、効果測定と同時に、現場の責任者やスタッフへのヒアリングも行ってください。業務のやり方を変えたことで新たな問題が生じたり、負担が増えたりしていないかといった、現場への配慮も必要です。
出荷業務を効率化するための施策
出荷業務の課題を解消し、効率化するための施策をいくつかご紹介します。工程ごとの課題に合わせて、取り入れられそうなものから実際に取り入れてみましょう。
業務を標準化し、マニュアルを整備する
出荷業務を効率化するための施策として、業務の標準化が挙げられます。まずは標準となる業務フローと品質を定めて、誰が行っても同じ業務を行えるようにマニュアル化してください。
この際に、その業務を初めて担当する人でもわかるようなマニュアルを作っておくことが大切です。これにより、担当者の能力に依存しない最適化された業務が実現するでしょう。
在庫管理システムを導入する
在庫管理状況に問題があったり、情報のスムーズな共有ができていなかったりするときは、在庫管理システムの導入も考えられます。在庫をシステムで管理することで、過剰在庫や欠品も防ぎ、出荷業務を効率良く進められるでしょう。
倉庫内を整理しロケーションを見直す
出荷作業を効率化するには、倉庫内の整理も有効な施策です。整理整頓は、どんな事業者でも手軽にできて、業務効率化に大きな役割を果たします。倉庫内の整理整頓は、作業スペースの確保や不用品の混入などを防いでくれるでしょう。
整理整頓を行い、どこに何が保管されているかを一目でわかるようにすることで、各種作業の効率も上げられます。できるだけ短い作業動線で出荷業務を行えるように、ロケーションを見直すのも効果的です。
商品の特性に合ったピッキングの種類や方法を選ぶ
効率化のための施策として、自社の取扱商材や特徴に合うピッキングの種類や方法を選ぶことも挙げられます。ピッキングの種類には、リストピッキング、ハンディピッキング、カートピッキング、デジタルピッキングなどがあります。
また、ピッキング方法としてオーダーごとにピッキングを行うオーダーピッキングと、必要な商品数を最初に集めてから出荷先別に分けるトータルピッキング、その両方を組み合わせて行うマルチピッキングがあります。適した種類・方法を見極めた上で導入してください。
ピッキングについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
適切なマテハンを導入する
効率化するための施策として、倉庫に適切なマテハンを導入することも重要です。
商品の運搬に問題があるような場合には、現在導入されているマテハンが適切であるかどうかを確認してみてください。
もし合っていない場合には、倉庫をリニューアルしてマテハンを入れ替え自動化すれば、出荷業務の大幅な効率化を見込めるでしょう。大規模な機器を導入しない場合でも、台車やカゴといったマテハンを商品特性に合ったものに変えたり、使い方を見直したりすることで効率化できる可能性もあります。
商品の保管からピッキングまですべてを自動化できる「AutoStore(オートストア)」なら、正確性が高く効率の良い出荷業務が可能になるでしょう。
人員配置を見直し、適正化する
スタッフの人員配置を見直して、適正化することも効率化のための施策といえます。
倉庫内で働くスタッフには、得意不得意があるはずです。それぞれのスタッフについて、能力を活かしやすい工程に配置されているか、確認してみることをおすすめします。
併せて、人材育成や教育体制の構築も大切です。ヒューマンエラーを削減するために、ミスが起こりにくくチェック機能が働くフローを策定し、周知しましょう。
なお、そもそも人材が不足している場合には、必要な人数を確認してすみやかに補充してください。補充できない場合には、限られた人数で無理なく対応できるよう、業務の省力化を進めなければいけません。
物流専門会社に物流を一括してアウトソーシングする
出荷作業の効率化には、物流専門会社への物流の一括アウトソーシングも挙げられます。特に、出荷業務の抜本的な改善を目指す事業者や自社での課題解決が難しい事業者におすすめの方法です。蓄積されたノウハウをもとにそれぞれの事業者に合う方法を提案してくれるため、自社の出荷業務だけでなく物流全体の仕組みを戦略的に整え、効率化することが可能になります。
また、繁忙期や閑散期の人員の増減が課題となっている業者にも、物流のアウトソーシングの活用がおすすめです。アウトソーシングを依頼した後は、人員の補充は物流専門会社が行うため、自社で対応する必要がなくなります。スタッフ数の増減は、自社だけでは解消しにくい課題です。人的コストの最適化には、アウトソーシングの活用をご検討ください。
出荷業務を効率化するメリット
出荷業務を効率化することで、さまざまなメリットにつながります。具体的に見ていきましょう。
人件費の適正化
出荷業務を効率化するメリットの1つに、人件費の適正化があります。
出荷業務を効率化して生産性が上がれば、人員や残業時間の削減が可能になります。また、出荷業務の正確性を上げてミスをなくすことで、トラブル対応にかかる人件費もカットできるはずです。出荷業務の効率化は人件費を適正にするだけでなく、スタッフの負担も軽減させられるでしょう。
主要業務へのリソース投入
自社の主要業務へリソースを投入できることも、メリットに挙げられるでしょう。
出荷業務の効率化によって必要な人員数を削減できれば、その分のリソースをコア業務に投入できるようになります。商品開発や販促など、売上の向上につながる業務により多くのリソースを投入することで、売上のアップや事業の拡大を期待できます。
顧客満足度の向上
出荷業務を効率化することで誤出荷が減り、顧客満足度の向上につながることもメリットといえます。
出荷業務の効率化と正確性の向上は、実は密接に関係しています。正確性を高められなければ、結局手戻りが増えて効率が悪くなってしまうためです。出荷業務を効率化することで、正確性を向上させましょう。
出荷業務の改善に役立つ、物流のアウトソーシングをご検討ください
出荷業務を改善できれば、コスト削減や業績アップ、顧客満足度の向上といった多くのメリットを得られます。一方で、出荷業務は多岐にわたり、どこをどのように改善すればよいのかがわかりづらいこともあるかもしれません。また、自社だけでは改善が難しい課題を抱えていたり、社内では気づけない課題が潜んでいたりする場合もあります。
自社での出荷業務の改善が難しい場合には、物流全体の最適化を行う物流専門企業へのアウトソーシングがおすすめです。プラス ロジスティクスでは、物流専門企業ならではのノウハウをもとに、それぞれのお客様の課題解決につながるサービスを提供しています。出荷業務の効率化や物流全体の最適化をお考えのお客様は、お気軽にご相談ください。