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在庫回転率とは、倉庫において、一定の期間でどれくらい在庫が入れ替わっているかを示す指標です。商品回転率ともいうこともあります。在庫回転率がわかれば、商品ごとの適正な在庫数や、経営効率を判断しやすくなります。物流の効率化を図るために、在庫回転率の考え方や算出方法を知っておきましょう。
この記事では、在庫回転率を把握するメリットや計算方法、物流の効率化につなげるための在庫回転率を上げるポイントを紹介します。
在庫回転率とは、一定期間で在庫がどれくらい入れ替わっているかを示す数値のこと
在庫回転率とは、一定期間における在庫の入れ替わりを示す数値です。商品回転率ともいうこともあります。
例えば、期首に在庫が500個あり、期末にも同じ500個だったとします。これだけでは「一切商品が売れずに在庫の変動がない」という状況なのか、「期中に合計1,500個の在庫が売れたが、新たに1,500個仕入れたため、結果として在庫数の変動がない」のかはわかりません。
在庫回転率は、このような商品の入れ替わりがどの程度あったのかを示します。
在庫回転率の計算方法
在庫回転率の計算は、期首と期末の平均値をもとに算出します。具体的な計算方法は、売上金額ベースで算出する方法と、個数ベースで算出する方法の2通りです。それぞれの計算方法を紹介します。
商品の売上原価をベースにする計算方法
まずは、売上金額ベースで在庫回転率を計算する方法を見ていきましょう。必要な数値は、知りたい期間の商品の売上原価と平均在庫金額です。
在庫回転率=商品の売上原価(1年間)÷平均在庫金額
なお、1年間の商品の売上原価は、下記のように計算します。
商品の売上原価(1年間)=(期首の棚卸高+商品の仕入高)-期末の棚卸高
期間中の平均在庫金額を算出する際の計算方法は下記のようになります。
期間中の平均在庫金額=(期首の棚卸高+期末の棚卸高)÷2
例えば、期首の棚卸高が100万円、期末の棚卸高が200万円、商品の売上原価(1年間)が900万円だった場合の計算式は、下記のとおりです。
900万円÷{(100万円+200万円)÷2}=6
よって、この商品の在庫は、1年間で6回転したことがわかります。
出庫した商品の個数をベースにする計算方法
次に、出庫した商品の個数をベースにした計算方法をご紹介します。期首と期末の在庫数と、1年間に倉庫から出庫した商品の個数で、在庫回転率を計算することが可能です。
出庫した商品個数をベースにした在庫回転率の計算方法は、下記のとおりです。
在庫回転率=出庫した総数÷平均在庫数
また、期間中の平均在庫数は、下記の計算式で求めます。
期間中の平均在庫数=(期首在庫数+期末在庫数)÷2
期首の在庫数が50個、期末の在庫数が70個、出庫した総数が300個だった場合の計算は下記のとおりです。
300÷{(50個+70個)÷2}=5
よって、この商品は1年間で5回転したことになります。
在庫回転率と同様に経営状態の可視化に役立つ在庫回転期間
在庫回転率と同様に、経営状態を可視化することができる指標のひとつとして「在庫回転期間」があります。
在庫回転期間とは、在庫が1回転するために必要な期間のことです。在庫回転期間が短いほど短期間で効率よく在庫が1回転しているということになり、その商品は売れ筋であるといえます。反対に、在庫回転期間が長い場合、売上に貢献できていない過剰在庫といえるでしょう。
在庫回転期間を求める計算式は、下記のとおりです。
在庫回転期間=棚卸資産÷売上原価(1年間)
例えば、ある会計期における棚卸資産が200万円、売上原価が800万円だった場合の在庫回転期間は下記のとおりです。
200万円÷800万円=0.25
よって、0.25年=3ヵ月で在庫が1回転していることがわかります。
適正な在庫管理をするためには、在庫回転率や在庫回転期間の把握が欠かせません。
定期的に在庫回転率や在庫回転期間を計算し、分析することで、販売機会を逃さず、顧客ニーズに即応できるようになります。在庫管理の適正化に活用してください。
在庫回転率を可視化するメリット
在庫回転率は、大きいほど在庫の入れ替わりが激しく、多くの売上を上げられていると考えることが可能です。
ただし、目安となる在庫回転率は、商材や業種によって異なります。薄利多売の商品と大型商品では、当然回転率は変わります。商材や業種に合った適切な在庫回転率を維持することが大切です。
では、在庫回転率を可視化することで、どのようなことがわかるのでしょうか。下記の3つのポイントについて解説します。
顧客ニーズを把握でき、経営状態を改善できる
在庫回転率をもとに仕入れを調整することで、過剰に在庫を抱えるリスクを防ぐことが可能です。これによって、経営状態を改善することができます。
商品ごとの在庫回転率を調べれば、ニーズの高い商品とニーズの低い商品を判別できます。在庫回転率が低い商品の仕入れを抑えれば、滞留在庫を減らすことが可能に。
反対に、在庫回転率が高い商品はニーズが高い商品ということになるので、在庫切れが起こる可能性があるのであれば、在庫数を増やすといった対応が求められます。
リードタイムの適正化につながる
在庫回転率を調べることで、在庫過多や在庫切れを防ぐことができ、商品が顧客の手元に届くまでのリードタイムを適正化することができます。
回転率に応じた適正な在庫数を検討し、該当の数を維持しておくことで「受注の勢いに在庫が追いついておらず、発送までに時間がかかってしまう」といった事態を防ぐことが可能です。商品を取り寄せる時間などが不要になればリードタイムの適正化につながり、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
無駄なコストを削減でき、効率化につながる
在庫回転率を知ることで、必要以上の在庫を抱え込んでしまうリスクを抑えられます。過剰在庫で倉庫スペースを埋めることがなくなりますから、無駄が省かれ、効率の良い経営が可能です。
在庫回転率に応じた在庫数を維持することは、無駄なコストの削減につながります。売上の悪い商品の取り扱いを停止したり、在庫数を減らしたりして、経営の効率化を図ってください。
在庫回転率を上げるためにできること
ここからは、在庫回転率を上げて効率の良い経営を行っていくためのポイントをご紹介します。単純に在庫回転率を把握するだけでなく、改善していくための施策につなげることが大切です。
目標となる在庫回転率を決める
在庫回転率の目標を決めることで、何を目指せばいいのかがはっきりします。在庫回転率は商材や業界によって異なるため、同業他社の在庫回転率を参考にするといいでしょう。
目標となる在庫回転率を決めるにあたっては、売上分析が役立ちます。いつ、どの商品が、どのくらい売れたのかを可視化し、分析することをおすすめします。
また、売上目標額から目標回転率を逆算することも可能です。売上目標原価を目標平均棚卸高で割ると、目標とする在庫回転率を算出できます。
売れ筋商品とそうでない商品でも、在庫回転率の目標は変わります。季節によるニーズの変化やトレンドなども踏まえて、自社の商材に合った目標設定を行ってください。
リードタイムを適正化する
リードタイムとは、商品の発注から納品までにかかる期間のことです。
リードタイムを適正化すれば、顧客の求めに応じて在庫を回転させられます。反対に、リードタイムが長すぎると、処理に時間がかかる分、多くの在庫を抱えておかなければいけません。
受注後、すみやかに在庫引き当てを行い、適正な期間で出荷していくことで、結果として倉庫内の商品が素早く外に出ていきますから、無駄のない経営が可能になります。
リードタイムの適正化は、顧客満足度にもつながります。顧客満足度が上昇してリピートや良い口コミにつながれば、売上の上昇と在庫回転率アップも可能に。商品のピッキングや検品、梱包などの無駄を洗い出し、適正化を目指してください。
在庫の管理体制を見直す
在庫の管理体制を見直すことでも、在庫回転率を上げることは可能です。
在庫がどこにあるかわからない状態だったり、存在が忘れられている在庫があったりすると、在庫回転率の低下を招きます。在庫の管理体制を見直して、どこに何があるかを明確にしましょう。
正確性の高い在庫管理ができれば、不良在庫の把握もしやすくなります。
プラス ロジスティクスでは、荷主企業さまの要望に合わせ、適切な在庫量を設定。徹底した在庫管理を行って商品ごとの出荷実績を荷主企業さまに報告しています。在庫回転率の向上にお役立てください。
在庫回転率を高めたいなら、流通戦略の見直しをご検討ください
在庫回転率を高めることは、経営の改善や顧客満足度向上につながります。自社の在庫回転率が適切かどうか、あらためて考えてみてください。
在庫回転率を高めるためには、正確性の高い在庫管理が必須です。倉庫内の管理が不適切で在庫が行方不明になってしまったり、在庫引き当てが適切に行えていなかったりすると、在庫回転率が下がる原因になります。在庫を効率良く回転させていくために、流通戦略や管理方法を見直すことが大切です。
物流専門企業のプラス ロジスティクスでは、お客様の商材や課題に合わせた最適な物流設計を提案しています。在庫回転率の向上につながる倉庫業務のシステム化や在庫管理方法の改善は、プラス ロジスティクスにお気軽にご相談ください。