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稼働率とは、設備やキャパシティの実働割合を指す言葉で、「実働率」や「操業率」と呼ばれることもあります。10分に100個の処理が可能な機械を保有する企業が、10分に70個の処理を行っていた場合、稼働率は70%ということになります。
物流業界における稼働率は、主にトラックの稼働率を示します。稼働率を調べることで、トラックが稼働できる時間のうち、実際に動いている時間がどのくらいなのかがわかります。
保有しているトラックを最大限活用するためには、稼働率を上げる必要があるでしょう。トラックの稼働率アップは、生産性の向上や業務効率化にもつながります。
この記事では、トラック稼働率の基礎知識と計算方法のほか、生産性向上のポイントについて解説します。
物流の稼働率とは、トラックが対象期間に対して実際に稼働した時間の割合のこと
稼働率とは、設備の稼働割合を示すものです。物流業界においては、特にトラック稼働率を指すことが多いでしょう。稼働率を計算すると、一定期間のうち、トラックが実際に稼働している時間割合がわかります。宿泊を伴う場合は、宿泊のために止まっている時間を除いて計算します。
稼働率が高ければ、それだけ設備を十分活用できているということです。これは、トラックの場合でも変わりません。稼働率を上げるために工夫することで、コスト効率の向上につながります。
稼働率の計算方法
=対象期間中の稼働時間÷対象期間の総時間×100
例えば、1ヵ月(30日間)で1日平均9時間、20日稼働したトラックの稼働率は下記のように計算します。
(9時間×20日)÷(24時間×30日)×100=25%
よって、上記のトラックは25%稼働しており、残りの75%は稼働していないということになります。
稼働率と可動率の違い
稼働率に似た言葉に「可動率」があります。「かどうりつ」と読むと稼働率との違いがわからないため、事業者によっては「べきどうりつ」と読むことがあるかもしれません。
可動率は、設備の総運転時間に対し、正常に運転した時間の割合を示す割合です。設備の運転効率がわかるため、製造現場で多く利用されています。
例えば、工場で1ヵ月のうち360時間、設備を稼働させており、そのうちシステムメンテナンスやトラブル発生などによって18時間稼働ができなかったとします。この場合の、可動率の計算式は下記のとおりです。
(360時間-18時間)÷360時間×100=95%
つまり、この場合の可動率は95%です。
トラック輸送のKPIの設定につながる4つの指標
トラック輸送の生産性を高めるためには、KPI(Key Performance Indicator)を設定し、目標達成を目指していく必要があります。
KPIの設定に役立つ、稼働率と併せて確認しておきたい3つの指標は下記のとおりです。
■トラック輸送の生産性に関わる3つの指標
実車率 | トラックが走った距離のうち、荷物を載せていた距離の割合。 |
---|---|
空車率 | トラックが走った距離のうち、荷物を載せていなかった距離の割合。実車率の反対の意味を持つ。 |
積載率 | トラックの積載重量に対して、実際に載せた荷物の割合。 |
この「実車率」「空車率」「積載率」と「稼働率」を合わせた4つの指標を把握してKPIを設定し、その改善を目指すことで、生産性の向上や人手不足の解消につながるといわれています。
出典:国土交通省「貨物自動車運送事業における生産性向上に向けた調査事業の報告について」
KPIを設定したら、それぞれのKPIに沿って、達成するための施策を検討します。トラック輸送のKPIと、具体的な取り組み例は下記のとおりです。
■トラック輸送のKPIと取り組みの具体例
KPI | 取り組み例 |
---|---|
稼働時間の向上 | 中継輸送を活用し、トラックの非稼働時間を削減する。 |
実車率の向上 | 荷主と協力し、荷待ち時間を削減する。 |
空車率の削減 | 空車距離を減らすために、パートナー企業との共同配送を行う。 |
積載率の向上 | パートナー企業と物流拠点を共同化し、積載率向上につなげる。 |
稼働率の読み解き方
稼働率は、低すぎても高すぎても問題につながる可能性があります。算出した稼働率を正しく読み解き、稼働状況を効率良く資源を活用できているかどうかをチェックしましょう。具体的に稼働率は、下記のように読み解いていきます。
稼働率が低い状態:受注量が運搬能力に対して少ない
稼働率が低いということは、保有設備をフル活用できていない状態であるということです。トラックの稼働率が低い場合、下記のような要因が考えられます。
<トラックの稼働率が低い要因の例>
- 物量が少なく、トラックを余らせている
- 宿泊を伴う輸送など、トラックが稼働していない時間が長時間化しがちな非効率的な輸送が多い
「実際にはもっと稼働できるはずなのに、稼働率の低い状態が続く」という場合、それだけ資源を無駄にしていて、不要なコストが生じているということになります。
稼働率が高い状態:100%以上はかなり負荷がかかっている
稼働率が高いということは、効率良く設備を活用できているということです。例えば、稼働率が100%であれば、設備をフルに活用できているといえます。ただし、トラックの場合は、ドライバーに負荷がかかり過ぎる状態になっていないかどうかを確認する必要があります。
なお、稼働率の計算を期間中の時間ではなく、稼働が可能な時間で計算した場合、稼働率が100%を超えることもあります。
例えば、所定の稼働時間が1ヵ月に160時間であるのに対し、200時間稼働しているといったケースが該当します。このような場合も、従業員や設備に負荷がかかりすぎているということになるため、見直しが必要だといえます。
トラックの稼働率に関しては、70%程度を目安にする事業者が多いようです。自社に合った稼働率を目標設定し、達成できるように工夫することが求められます。
トラック稼働率を高めるためにできること
トラックの稼働率を高めれば、生産性もアップします。稼働率を向上させるために、運送方法の見直しを検討しましょう。ここでは、トラックの稼働率を高めるためのポイントをご紹介します。
中継輸送の取り組み
長距離の荷物の輸送を行う際、中継輸送を取り入れることで稼働率を上げられる可能性があります。
中継輸送とは、長距離輸送の際、中継地点でドライバーを変更することで宿泊を伴う輸送を回避する方法です。主に、下記の3つの方法で行います。
<主な中継輸送の方式>
- ヘッド交換方式:中継地点でトラクターを交換する方法です。牽引免許を持っているドライバー同士が協力し合う必要がありますが、少ない手間で効率良く中継が可能です。
- 貨物積み替え方式:中継地点で別のトラックに荷物を積み替えたり、荷台を交換したりする方法です。
- ドライバー交代方式:中継地点でトラックのドライバーを交代し、別のトラックを運転してそれぞれの行先に戻る方法です。
中でもドライバー交代方式は、それぞれの地域の事業者同士が協力し合えれば、効率良く、少ないコストで中継輸送を実現できるとして、注目が集まっています。
■ドライバー交代方式の中継輸送
中継輸送を実現できれば、トラックの稼働率アップだけでなく、長距離輸送の抑止によるドライバーの負担軽減や人材確保にもつながるでしょう。
しかし、中継輸送にはパートナーを探すのが難しいという難点もあります。それぞれの地点に向けた輸送を行っている企業同士が協力する必要がありますし、自社の荷物を任せることになるため、信頼関係の構築が必須です。
システムを導入する
物流の現場では、最適なルートの割り出しや最適なサイズのトラックの予約、運行時間をリアルタイムで荷主企業に伝達するなど、さまざまなシステムが運用されています。必要に応じたシステムを活用することで、業務の効率化を図ることが可能です。
例えば、荷物の積み込みや積み下ろし、荷待ちにかかる時間を適切に管理するシステムを導入すれば、時間のロスを防ぎ、ドライバーの待ち時間を短縮でき、トラックが稼働できる時間を確保することにつながります。
プラス ロジスティクスでは荷主様に最適なシステムを提案し、稼働率や積載率向上に寄与しています。
毎日、適した配送ルートを計算することができるシステムを導入することで、配車の効率化が実現。属人的な配車業務から脱却し、稼働率もアップしました。利益率が向上し、ドライバーの負荷軽減にもつながっています。
システム化が難しい場合でも、作業手順を見直して無駄を排除したり、トラックの積み下ろしなどを行う場所を整備して効率良く作業できるようにしたりすることで、効率化を図ることが可能です。できることから進めていくことをおすすめします。
プラス ロジスティクスの荷主様システム導入例についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
プラス カーゴサービスはトラックの稼働率改善のお手伝いを
トラックの稼働率を上げるためには、物流企業と荷主が協力し合い、物流全体の最適化を目指すことが大切です。物流効率を上げるとともに、ドライバー不足といった問題を解消するためにトラックの稼働率アップを目指しましょう。
プラス ロジスティクスグループのプラス カーゴサービスでは、物流課題を整理して、解消するための方法をご提案しています。お客様に適したシステムでトラック稼働率の改善方法をコーディネートすることも可能です。ぜひご相談ください。
物流の稼働率に関するよくある質問
- Q1_物流の稼働率とは?
- 稼働率とは、設備やキャパシティの実働割合を指す言葉で、「実働率」や「操業率」と呼ばれることもあります。10分に100個の処理が可能な機械を保有する企業が、10分に70個の処理を行っていた場合、稼働率は70%ということになります。物流業界における稼働率は、主にトラックの稼働率を示します。
- Q2_稼働率の計算方法は?
- 稼働率は、一般的に次の計算式で算出します。<稼働率の計算式>=対象期間中の稼働時間÷対象期間の総時間×100。稼働率は、低すぎても高すぎても問題につながる可能性があります。算出した稼働率を正しく読み解き、稼働状況を効率良く資源を活用できているかどうかをチェックしましょう。
- Q3_稼働率と実車率の違いは?
- 実車率とはトラックが走った距離のうち、荷物を載せていた距離の割合です。「稼働率」と、「実車率」「空車率」「積載率」を合わせた4つの指標の改善を目指すことで、生産性の向上や人手不足の解消につながるといわれています。「稼働率」と似た用語に「可動率」がありますが、「可動率」は設備の総運転時間に対し、正常に運転した時間の割合を示す割合です。