この記事は、 11 分で読めます。
物流は、もはや人々の暮らしになくてはならないサービスのひとつだといえます。物流倉庫会社は、こうした物流の中でも重要な工程を担う専門業者です。
この記事では、物流倉庫会社が行う業務の範囲や物流倉庫会社の種類のほか、物流業務を外部に委託するメリットとデメリットなどについてまとめてご紹介します。物流業務の在り方を検討する際の参考にしてください。
商品の入庫から検品、仕分け、梱包、発送までを行う物流倉庫会社
物流倉庫会社とは、商品の保管や仕分けなどを行う物流倉庫を保有・運営する物流専門企業です。メーカーなどが製造した商品は物流倉庫に預けられます。その後、発注が生じたタイミングで検品や仕分け、梱包が行われ、小売店や消費者の元へ発送されます。
EC業界が急成長を遂げている昨今、物流の重要性は年々高まっているといえるでしょう。物流倉庫会社も、単純に商品を保管するだけでなく、検品や流通加工、在庫管理、梱包など、さまざまな業務に対応しています。さらに、物流システムを使って業務を自動化することによるヒューマンエラーの削減やリードタイムの適正化なども盛んに行われています。
ただし、具体的な対応範囲は物流専門企業によって異なりますから、個別の確認が必要です。
物流倉庫会社の主な業務
物流倉庫会社の主な業務は下記のとおりです。なお、業務のすべてを委託することができる物流倉庫会社や、一部のみを委託できる物流倉庫会社もあります。
検品
検品とは、入荷した商品の状態や性能、数に間違いがないか確認することを指します。入荷伝票を確認するほか、専用のシステムを使用することもあります。
入庫
入庫とは、検品が終わった商品を倉庫内の決められた場所(ロケーション)に保管すること。入庫が完了した荷物は、在庫として数量を計上します。
流通加工
流通加工とは、値付けやシール貼りなど、流通にあたって必要な加工のことです。小分け包装、生鮮食品などの二次加工なども流通加工にあたります。
ピッキング
ピッキングとは、出荷伝票に従って、必要な商品を倉庫内から集める業務です。間違わないように、近年はシステムを活用して行っています。
ピッキングについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
荷揃え
荷揃えとは、配送先別に商品を特定の場所に集める業務のこと。ピッキングの後に、個数の確認をしながら行うことがほとんどです。
出庫
出庫とは、商品や荷物を倉庫の外に出す作業のこと。出庫数をしっかりと把握し、正しい在庫数を算出します。
物流倉庫会社が所有する倉庫の種類
物流倉庫会社が所有する倉庫は扱う商品に応じて法令で大別されており、「普通倉庫」「冷蔵倉庫」「水面倉庫」の3種類となります。普通倉庫はさらに細かな種類やグレードに分けられ、それぞれ保管できるものや保管環境が異なります。倉庫業法で定められている物流倉庫の種類と、扱う商品の種類は下記のとおりです。
普通倉庫
普通倉庫は、農業や鉱業、製造業、一般消費者の持つ財産などを保管します。7種類ある普通倉庫の具体的な違いをご紹介します。
- 1類倉庫
1類倉庫とは、防湿、耐火、防火、防犯などの厳しい施設設備基準を満たす倉庫です。日用品、繊維、パルプ、電気機械などの保管に適しています。
- 2類倉庫
2類倉庫とは、耐火、防火性能の基準がない倉庫です。1類倉庫よりも保管できるものが限定的で、燃えやすいものは保管できません。保管できるものは、塩やでんぷん、肥料などです。
- 3類倉庫
3類倉庫とは、耐火性、防火性、防湿性の基準がない倉庫です。燃えにくく、湿度による変質も起こりにくい商品を保管します。陶磁器、鉄材、ガラス類などが該当します。
- 貯蔵槽倉庫
貯蔵槽倉庫とは、梱包されていないバラの小麦、大麦、トウモロコシなどのほか、糖蜜などの液状の商品を保管する倉庫です。サイロ、タンクと呼ばれることが多いでしょう。防火、耐火性能があります。
- 野積倉庫
野積倉庫とは、柵や塀などで囲われた屋外に商品を保管する倉庫のことです。日光や風雨の影響を受けにくい自動車やレンガなどを保管します。
- 危険物倉庫
危険物倉庫とは、消防法に指定される危険物や高圧ガスを保管する倉庫のこと。防火性、防湿性、防水性、防犯性に関する基準と、保管する商品に応じた個別の規定を満たす必要があります。貯蔵する危険物によって、タンク貯蔵所、地下タイプの貯蔵所、移動式タンク貯蔵所などの種類があります。
- トランクルーム
トランクルームとは、個人の荷物を預けるための倉庫です。トランクルームは国土交通省に登録している業者のみが運営することができるもので、荷物の管理や出し入れは業者が行います。貸し倉庫とは別なので注意してください。
水面倉庫
水面倉庫とは、原木などを保管する倉庫です。主に原木の乾燥を防いで保管するために利用され、海や川などの水面に保管するものを直接浮かべて貯蔵します。
冷蔵倉庫
冷蔵倉庫とは、10℃以下で保管が必要な商品のための倉庫のこと。貯蔵するのは、食肉や水産物、冷凍食品など。食品の性質によって細かい温度設定を行い、管理を徹底しています。
物流倉庫会社の最新の動向
物流倉庫会社は、2019年度から3年連続で9割以上の企業が黒字決算です(国土交通省「令和3年度倉庫事業経営状況報告」)。今後も引き続き、物流倉庫の需要は高まっていくと考えられます。
続いては、物流会社の最新の動向について見ていきましょう。
自動化技術の導入
近年、荷物を運搬するシステムや、自動梱包システム、ピッキングシステムなど、倉庫内で活躍するロボットの導入が進んでいます。倉庫内で業務を行う人材不足に代わる労働力として、もしくはヒューマンエラーの防止など、多様化するニーズへの対応に自動化技術の導入は効果的です。
ただし、設備投資には莫大なコストがかかることから、自動化が進む大手企業に対し、中小企業は消極的となっており、倉庫への自動化技術の導入は二極化の傾向があります。
物流倉庫の自動化についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
物流量が増えて需要が拡大中
EC業界が盛り上がりを見せる中、物流倉庫会社の需要も拡大しています。物流倉庫の面積は年々増加しており、それに伴い人材不足も加速しているといえます。ニーズが高い反面、労働力の確保については課題を抱えています。
EC物流についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
異業種が参入、倉庫のあり方の変化
従来の物流倉庫は、主に物流を専門とする会社が運営していましたが、近年では鉄道会社や不動産業者といった異業種の会社が、不動産投資を目的として物流倉庫をもつケースも増えています。小売業やECによる物流倉庫の需要がさらに高まっていくことを見込んでいるもので、物流倉庫業務は行わず、賃貸面積に応じた賃料を収受するビジネスモデルです。
このように物流倉庫会社の在り方も変化しており、商品保管業務を営むだけでなく、3PLのような複合的なサービスを展開する会社も登場しています。
3PLについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
物流倉庫会社に業務を委託するメリット
物流倉庫会社へ業務を委託することには、多くのメリットがあります。自社の物流業務に課題を感じている事業者には、物流倉庫会社の活用がおすすめです。その理由について、詳しく見ていきましょう。
コア業務に注力できる
多岐にわたる物流業務を社内で対応するには、多大な人的リソースが必要です。物流倉庫会社への委託を上手に活用すれば、自社の人的リソースを生産性の高いコア業務にあてられます。
物流倉庫会社には、専門性の高い設備やノウハウがあります。自社で対応するよりも、高品質な物流を実現することが可能です。社内の人材を有効活用するためには、物流倉庫会社の活用が近道といえるでしょう。
コストダウンが期待できる
自社で倉庫を運用するとなると、土地代や倉庫の建設費といった初期費用のほか、人件費や光熱費、システム構築代金など、多くのランニングコストが発生。一方、物流倉庫会社に委託した場合は、月額料金や従量課金制の利用料などがかかります。
いずれにせよ費用はかかりますが、初期に莫大な費用を投じる必要がなく、最新設備などが導入されたプロの手によって管理される倉庫をリーズナブルに利用できる点は、物流倉庫会社を利用する大きなメリットです。物流量や稼働期間などにもよりますが、トータルコストを下げられる可能性は十分にあります。
発注の増減に対応できる
物流の増減に対応できる物流倉庫会社を利用すれば、繁忙期と閑散期の物流量の変化にも柔軟に対応することが可能です。従量課金制の倉庫なら、物流量に応じたコストだけを支払えば良いため、無駄がありません。繁忙期に人員を増員するといった対応も、すべて物流倉庫会社が行います。物流量の変化を気にすることなく、本業に専念できるでしょう。
物流倉庫会社に業務を委託するデメリット
物流業務を物流倉庫会社に委託することは、メリットだけでなくデメリットもあります。下記のデメリットを踏まえた上で検討しましょう。
物流や倉庫業務のノウハウが社内に蓄積できない
物流倉庫会社を利用する場合、物流業務全般を外部に委託することになるため、物流ノウハウを社内に蓄積できません。将来的に物流業務や倉庫業務を自社で行いたい事業者は、どのように知見を得るのか検討する必要があります。
トラブル発生時に迅速な対応ができない
誤配や商品の破損といったトラブルが生じた際、自社で物流業務を担っていないと、返金や交換といった対応に時間がかかる可能性があります。顧客満足度にも影響を及ぼすため、対応方法やスピード感については、委託前に確かめておきましょう。
なお、物流会社の中には、クレームや顧客問い合わせの対応業務を請け負う業者もあります。
物流倉庫会社の選び方
自社で倉庫を持たないメーカーなどは、物流倉庫会社に業務を委託することになります。自社に適した物流倉庫会社を選ぶための5つのポイントは、下記のとおりです。
- 商品分野の適合性
前述のとおり、保管できる商品は倉庫の種類ごとに異なります。そもそも、預けたい商品を扱える倉庫なのかを、まずは確認することが必要です。また、法令に定められた区分以外のポイントについても、自社製品に照らして検討しましょう。
- 物流倉庫の立地
物流倉庫の立地は、事業内容に応じて考慮することが重要です。大別すると生産地の近くの物流倉庫か、消費する場所の近くの物流倉庫かの選択になります。
生産地に近い場所の物流倉庫は、近隣の多くの仕入先から商品を集めて配送先に運ぶのに適しています。反対に、多数の小売店などに商品を配送する必要がある場合、消費する場所に近い物流倉庫を借りることで配送コストを抑えられます。自社にとって、よりメリットの大きい立地の倉庫を選んでください。
物流倉庫の役割についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
- 物流倉庫の面積、スペース余地
物流倉庫の面積や、余っているスペースも重要なポイントです。広い物流倉庫を借りようとすれば、それだけコストも高額になります。しかし、預ける荷物に対してぎりぎりの面積しか余っていないと、物流量が増えた際に対応できない可能性があります。
物流倉庫の面積とコストのバランス、将来、事業が拡大した際に臨機応変な対応が可能かどうかなどについて確認してください。
- 保管コスト
物流倉庫の利用にかかるコストが適切かどうかも重要なポイントです。予算の中に実際のコストが収まっているかどうか、試算して検討します。
なお、予算を考える際は、物流倉庫の委託によって軽減できるコストと増加するコストのバランスを見ることが大切です。
- 作業品質
物流倉庫では、検品や流通加工、ピッキング、梱包といったさまざまな業務を行います。それぞれの工程で作業品質に問題がないか確認しましょう。設備やシステムを確認し、ヒューマンエラーを防げる体制づくりができている物流倉庫を選ぶのがおすすめです。
物流倉庫会社は最新の情報技術を持つ専門家集団をセレクトしよう
メーカーから消費者の元へと商品を届けるための中継地点となる物流倉庫は、適切な商品を適切な数量、適切なタイミングで届けるための管理を行います。スムーズで正確性の高い物流を実現できれば、顧客満足度を高めることが可能です。
物流倉庫の持つ役割を最大限に活用するためには、自社にマッチした高い専門性を持つ物流倉庫会社の活用が効果的です。プラス ロジスティクスグループでは、数多くの物流倉庫の中か ら、それぞれの事業者に最適なご提案をしています。物流を総合的に見直すことで、業務の効率化、最適化を目指すお客様は、ぜひ一度ご相談ください。